より機動的に、レジリエンス経営へ - グローバルCEO調査2019 日本企業の特徴 速報版

5回目となる「KPMGグローバルCEO調査」は、世界の11ヵ国の1,300名のCEOを対象に行われ、日本の回答者は100名でした。調査は2019年1月8日から2月20日に実施されました。本資料では、前回の調査からの意識変化や調査対象全体の結果との差異の観点から、日本企業の傾向をお伝えします。

5回目の「KPMGグローバルCEO調査」は、世界11ヵ国1,300名のCEOを対象に行われ、日本の回答者は100名でした。本資料では、日本企業の傾向をお伝えします。

今回の調査で発見された重要事項の1つに、世界全体の3分の2以上のCEO が「機動性が新たなビジネスのカギとなる」と回答したことが挙げられます。この機動性への注目は、これまで短期的な逆風への対応が強く連想されていた『レジリエンス』という言葉が再定義されたとも言え、近年の社会的、経済的および技術的な逆風はもはや短期的なものではなく、この世界で成長し続けるために、躊躇なくビジネスモデルを破壊し続けなければなりません。つまり、機動的な変革と適応が真のレジリエンスということです。日本のCEOは、破壊的な時代で成長を続けるために、保守的なレジリエンスから真のレジリエンスに向けたデジタルトランスフォーメーションを推進し、自らおよび組織全体の役割・責任を進化させていく必要があります。

日本企業の特徴

  • これからの時代のカギとなる機動的な変革と適応の戦略に戸惑いが生じ、経営モデルは保守的である
  • 真のレジリエンスに向けて、組織レベルでのデジタルトランスフォーメーションが必要
  • 失敗から素早く学び次のアクションにつなげられるよう、社風および改革プロセスの改善が急務

世界経済の見通しへの警戒感

今後3年間の世界経済の成長見通しについて、「非常に自信がある」または「自信がある」と回答した日本のCEOは昨年の85%から62%と減少し、うち「非常に自信がある」との回答は半減しており、世界経済の見通しへの警戒感が強まっています。自社の成長についても日本のCEOの87%は自信があると回答し、昨年と変わりませんが、国別では一番低い割合となっています。

今後3年間の世界経済の成長に対して「自信がある」と回答した割合

成長戦略の施策の変化

今後3年間で優先する成長戦略は、「オーガニックグロース」(29%)と「第三者との戦略的提携」(28%)が上位ですが、「第三者との戦略的提携」の回答割合は2018年の39%から減少し、代わってM&Aとアウトソーシングが伸びています。今後3年のM&Aに対する意欲は、2018年と比較して、組織全体に重要な影響を及ぼすM&A(19%)よりも、適度なM&A(64%)にシフトしています。米国では引き続き大規模なM&Aへの意欲が高い傾向が見られます。
オーガニックグロースの重要度が依然高いこと、M&Aへの意欲は大規模なものではなくアウトソーシングの重要性が増加していること、を総合的にとらえると、昨年と比較しR&Dや設備投資などの自社内のリソースの最適化・効率化が優先されている可能性があります。

今後3年間で優先する成長戦略

全体
2019 2018
第三者との戦略的提携 34% 第三者との戦略的提携 33%
オーガニックグロース 25% オーガニックグロース 28%
M&A 17% M&A 16%
ジョイントベンチャー 15% ジョイントベンチャー 13%
アウトソーシング 10% アウトソーシング 10%

 

日本
2019 2018
オーガニックグロース 29% 第三者との戦略的提携 39%
第三者との戦略的提携 28% オーガニックグロース 29%
M&A 18% ジョイントベンチャー 18%
ジョイントベンチャー 14% M&A 10%
アウトソーシング 11% アウトソーシング 4%
今後3年間のM&Aに対する意欲

サイバー戦略の重要性

75%のCEOは「ステークホルダーの信頼獲得には、強固なサイバー戦略が必須である」と回答し、昨年から10ポイント上昇しています。また、サイバー攻撃に対する準備状況も前回から大幅に改善し、66%が準備完了としています。ただし、競争優位性を生み出す戦略的な機能として情報セキュリティをとらえるCEOは他国と比較して少なく、リスク回避および投資家対応に終わっている可能性があります。

情報セキュリティは競争優位性を生み出す戦略的な機能である

保守的なレジリエンス

不確実な環境における真のレジリエントな事業の定義について、「コア事業を守れること」との回答が43%、「変化するビジネス環境に速やかに順応できること」が24%で、「市場を破壊できること」はわずか7%という結果でした。他国と比べて、日本のCEOは市場破壊の重要性は理解しつつも、コア事業を守ることを優先しています。

不確実な環境において、真のレジリエントな事業とは

Technology 4.0

AIはパフォーマンス変革に寄与しうるものですが、AIで自動化済みのプロセスがすでにあると回答した企業はわずか12%です。これに対し、米国では31%となっています。取組みが遅れている中、ほとんどの日本のCEOは、自社の全体的なデジタル変革プログラムの投資回収期間を3年以内、AIシステムを5年以内とし、短めの投資回収期間を想定しています。業務効率化のためのAI導入が進められ、市場破壊戦略としてのAI活用がなされていない可能性がうかがえます。

AIの導入状況:グローバル全体
AIの導入状況:日本
AIの導入状況:米国

経営者の変革に対する意識

7割の日本のCEOは「以前より在任期間が短くなっており、機動性をもった行動がより一層求められている」と答えおり、市場からのプレッシャーに対して早く結果を残す必要性を強く感じています。また、CEOの80%は失敗から学ぶ社風を創りたいと考えている一方、そのような企業文化を醸成できているのは41%にとどまっており、米国(80%)と比較するとかなり低い結果となっています。

「以前より在任期間が短くなっており、 機動性をもった行動がより一層求められている」と回答した割合

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