働き方改革におけるAIの活用
「同僚はデジタルレイバー」第11回 - 「働き方改革」を推進させるデジタルレイバーの導入について考察する。
「働き方改革」を推進させるデジタルレイバーの導入について考察する。
2016年11月、経済産業大臣は閣議後会見で経産省職員の残業時間の大幅短縮に向けて、ICT(情報通信技術)を活用したテレワークの導入とともに、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使った国会答弁集の作成高度化についても言及し、政府が推進する「働き方改革」に率先して取り組む姿勢を示した。
RPAや人工知能(AI)などのデジタルレイバーの導入は、企業の働き方改革を支援する。特に定型作業については人が行っていた作業の大幅な削減が可能である。働き方改革は、ノー残業デーの設定やサービス残業の撤廃を掲げるだけでは実現しない。労働時間を短縮しても利益を上げられる仕組みが必要である。定型業務をデジタルレイバーにシフトすることで、収益性の向上や業務効率の改善のみならず、従業員をルーティン作業から解放し、職場のモチベーションを向上させることもできる。また、経産省は2016年4月にあらゆるモノがネットにつながる「IoT」、ビッグデータ、ロボット、AIなどによる技術革新に対応し、日本企業がさらに成長するための方向性を示した「新産業構造ビジョン」の中間整理を公表した。
同ビジョンでは、就業構造転換のポイントとして「AIやロボット等の出現により、定型労働に加えて非定型労働においても省人化が進展する。人手不足の解消につながる反面、バックオフィス業務等、我が国の雇用のボリュームゾーンである従来型のミドルスキルのホワイトカラーの仕事は、大きく減少していく可能性が高い」「一方、業務の変化は、ミドルスキルも含めて新たな雇用ニーズを生み出していくため、こうした就業構造の転換に対応した人材育成や、成長分野への労働移動が必要」としている。
また就業構造変革の姿として、現状を放置したままでは、高付加価値業務は海外に流出し、ボリュームゾーンのAI・ロボットを活用・共働する仕事も大きく減少する。代替される仕事のみが増え、低賃金化すると指摘している。日本企業の働き方改革に必要なのは、労働量・時間だけではなくAIやロボットの活用も視野に自らの労働の質・内容を変えることである。
デジタルレイバーによる就業構造の変化
日経産業新聞 2017年4月14日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。