金融機関におけるデジタルレイバー適用事例
「同僚はデジタルレイバー」第19回 - 経理・財務業務領域でも進むデジタルレイバーの活用について、事例をもとに解説する。
経理・財務業務領域でも進むデジタルレイバーの活用について、事例をもとに解説する。
国内大手金融機関B社では、経理・財務業務領域へのデジタルレイバーの活用に取り組んでいる。適用範囲を限定したスモールスタートアプローチにより効果および適合性の検証を実施し、範囲の拡大を進めてきた。
会計伝票の起票及び照合業務の場合、従来は(1)他部門から証憑(しょうひょう)データをメールで受領(2)証憑内容と伝票計上ルールと照合し、計上用データを作成(3)計上用データを会計システムに転記したのち、承認者へ計上申請を実施(4)申請済み伝票を印刷し、承認者の押印を受けるといった流れで実施されてきた。当該作業は反復的かつ定型作業であるため、デジタルレイバー導入後、プロセス全体のうち約70%が自動化された。また明確化されたルールでの処理を行うため、人のケアレスミス等による計上ミスを防止でき、作業の高品質化にも寄与した。自動化できなかった30%のプロセスは、他部門担当者への質問・確認作業や紙の帳票に押印する等の物理的処理が必要となる作業などであった。
また、日次会計レポート作成業務の場合、従来は(1)前日リポートデータを当日リポートフォーマットへコピー・修正(2)会計システムより最新の会計情報を取得し当日リポートフォーマットへコピー(3)当日リポートデータの集計・加工(4)リポートデータをメールで関係者に配信するといったプロセスで行われていた。デジタルレイバーを導入した結果、月初のみ発生する例外的な集計作業を除いて、すべての作業が自動化された。担当者が不在の際にも作業が滞ることなく、安定的にリポートを作成することが可能となった。また、すべての作業手順がデジタルレイバーによりワークフローとして見える化されたため、作業の属人化解消にも寄与した。
会計業務は高い正確性が求められるため、業務の実施を人からデジタルレイバーに切り替える際、リスクを最小限にする工夫がなされた。たとえば、デジタルレイバー導入後も、発生頻度は低くかつ手順が煩雑な例外処理は人が継続して実施していくこととした。また、デジタルレイバーの処理結果に対して当初は業務担当者がチェックを行い、一定期間経過後品質に問題ないと判断してからデジタルレイバーによる単独業務実施に切り替えた。
B社では経理・財務業務において高い改善効果が実証されたため、全社での取組みとしてデジタルレイバーの活用を広げることになった。
経理・財務業務への適用における示唆
スモールスタート | 範囲限定の適用から始まり、効果実証された後に全社へ展開 |
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高い導入効果 | 業務担当者の作業時間短縮、作業品質向上、作業の属人化解消 |
リスク軽減 | 業務担当者による例外処理の対応、デジタルレイバーの作業品質チェック |
日経産業新聞 2017年4月26日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。