IFRS第17号 - 保険契約基準の改訂案

当改訂案は、同じポートフォリオ内の保険契約グループを相殺することによる実務上の負担軽減措置を保険者に提供するものである。

当改訂案は、同じポートフォリオ内の保険契約グループを相殺することによる実務上の負担軽減措置を保険者に提供するものである。

2018年12月の会議において、IASBは、新しい保険契約基準(IFRS第17号)の改訂を提案

当改訂案は、財政状態計算書上保険契約をポートフォリオ・レベル(現行のIFRS第17号で要求されている契約グループレベルよりも集約されたレベル)で表示するよう要求することにより、保険者に実務上の負担軽減措置を提供することを目的としている。

当会議では、IASBは他に12項目の議題についても審議しているが、これらの議題において修正提案を行わなかった。

表示規定の改訂案

現行のIFRS第17号は、資産である保険契約「グループ」の帳簿価額と負債である保険契約グループの帳簿価額を財政状態計算書上別個に表示するよう保険者に要求している(すなわち、グループ間での相殺はできない)。

IASBは、この規定を保険契約の(グループではなく)「ポートフォリオ」に適用するように変更する案を提示することを暫定的に決定した。すなわち、表示の目的上のみにおいて、同じポートフォリオ内のグループ間での相殺が適用されることとなる。

IFRS第17号に基づき保険契約を集約する場合には、契約グループはポートフォリオよりも会計単位が小さくなる。このような契約グループは通常、単年度(または、それよりも短い期間)内に発行された類似の契約で構成されている。

契約グループは時の経過に伴い、キャッシュフローの時期に応じて資産ポジションにも負債ポジションにも転換し得るものの、保険契約ポートフォリオは、大半の期間において負債ポジションであることが見込まれる。

この暫定的な決定は、保険料キャッシュフローと発生保険金に係る負債を個々の保険契約グループの帳簿価額に配分することがシステムの制約により困難であるという保険者の懸念に対処したものである。

IASBは、以下を指摘している。

  • 財政状態計算書上のグループの相殺により生じる情報の喪失は、財務諸表作成者にとって重大な実務上の負担軽減措置と比較考量すると、許容可能とみられる。
  • 当改訂案により、現在進行中の適用プロセスが不当に中断されることはなく、保険者にとって適用コストの削減やプロセスの簡素化につながる可能性すらある。

当改訂案により保険者には実務上の負担軽減措置が提供される可能性が高いものの、データ面では依然として課題に直面する可能性のある保険者もある。例えば、再保険預託金は出再者が保有する場合が多いため、再保険者のポートフォリオは資産ポジションの場合もあれば負債ポジションの場合もある。このようなポートフォリオ間でキャッシュフローを配分することが要求されることとなる。

その他に、純額決済されるキャッシュフローを残存カバーに係る負債と発生保険金に係る負債に配分すること等の課題が依然として残っている。これは、特に再保険契約とブローカーとの取引に共通する課題である。

IASBは、追加情報を表示するのに必要な表示項目を分解することが保険者の財政状態を理解する上で目的適合性がある場合には、財務諸表作成者はこのような表示を行うことができる旨を指摘した。また、IFRS第17号の開示規定により、保険契約に関するリスクについての有用な情報が財務諸表利用者に提供されることとなる。

その他の審議された議題

IASBはその他に、10月の会議で取り上げられた合計25項目のうちの12項目の議題について審議した。IASBは、これらのうちの11項目については、10月の会議でIASBが設定した要件を満たしていないため、IFRS第17号の修正を提案しないことを決定した。1項目の議題(IFRS第17号への移行時のリスク低減オプションの適用可能性)については、移行規定に関するその他の議題とともに、将来の会議において審議される予定である。

IASBが検討しているプロセスには、IFRS第17号に関する懸念及び適用上の課題について当初行われた徹底的な審議の結果とともに、保険者がIFRS第17号の規定の影響を引き続き評価し、IFRS第17号の適用の複雑性に対処する実務的なソリューションを見出すことがいかに重要であるかが強調されている。

次のステップ

このIASBの決定は、11月にIFRS第17号の発効日を2022年まで延期する提案を暫定的に決定したことに続いて行われたものである。その後の措置はIASBの通常のデュー・プロセスの対象となり、公開草案の公表とその後のパブリック・コメント期間を経ることが必要となる。

公開草案の公表時期は未定なものの、これは将来の会議において取り上げられる残りの議題についての審議の時期及び内容によって決まることとなる。

次回のKPMGのウェブ記事でも、このような重要な審議の最新動向を取り上げる予定である。
新しい保険契約基準に関するKPMGのすべての所見については、kpmg.com/ifrs17を参照のこと。また、保険者のIFRS第17号及びIFRS第9号の適用に関するKPMGの所見については、「In it to win it」というKPMGのウェブページを参照のこと。

IASBの保険契約TRG(Transition Resource Group)が審議したIFRS第17号の適用上の課題の詳細については、kpmg.com/trgも参照のこと。

英語コンテンツ(原文)

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