技術の過渡期に求められるブロックチェーンの導入とは

「ブロックチェーン活用術」第5回 - 業務内容別に変化するブロックチェーンの今後と、技術の過渡期における導入の要否について解説する。

業務内容別に変化するブロックチェーンの今後と、技術の過渡期における導入の要否について解説する。

ブロックチェーンの変化

ブロックチェーンは理論的には2008年10月に仮想通貨「ビットコイン」とともに誕生し、09年に稼働が始まった歴史の浅い技術である。その基軸技術は以前から存在していたものを組み合わせており、その後、処理速度やセキュリティ、安定性を考慮した変更や追加した機能はあるものの、技術概要は大きくは変わっていない。最近の人工知能(AI)のような短い間に劇的な変化が相次いでいる技術とは少し様相を異にするのである。

構成する基軸技術は今後もしばらくは変わらず、使い勝手の向上を目指したバージョンアップや新しいプラットフォームの開発にとどまると予想される。AIは将来的な技術の中身の進歩が多く語られる一方、ブロックチェーンはその活用で社会がどう変わるかなど影響面が多く語られるゆえんである。ブロックチェーン自体には一般的に語られるほどの技術的な変化は少ないといえる。

今後変化が活発化するのは、用途を見据えたオプション機能の付加と業務パッケージング化と考える。ブロックチェーンは基本機能のみでは業務への適用が難しいことから、これまでは機能をアプリケーションとして個別に作り込む必要があった。しかし今後は徐々にオプションとして付加されるようになる。さらに、業務用システムがデータベースをアプリケーションに組み込んだ業務用パッケージとして提供されているのと同じように、ブロックチェーンも業務用パッケージに取り込まれていくだろう。その際、AIやビジネスインテリジェンス(BI)ツール、あるいは将来誕生する新しい技術と組み合わせて高度化し、ブロックチェーンそのものはサービスを裏方で支える技術として、利用者は意識しないものになっていくことは想像に難くない。

技術の過渡期にこそブロックチェーンを

現在は技術の過渡期であるから、しばらく静観するのが良いのであろうか。むしろ逆である。ブロックチェーンは複数の企業や組織がコンソーシアムを組んで利用する場面でこそ効果を発揮するプラットフォームである。企業は、いち早くサービス提供者側に回ることが主導権を握る十分条件であり、他社に先行して投資することは賢い選択と考える。
技術転換期の今こそ、迅速にブロックチェーンに関する知見を蓄積し、ビジネスに生かす姿勢が経営に求められる。

業務目標別にパッケージ化

業務目標別にパッケージ化

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアマネジャー 宮原 進

日経産業新聞 2018年11月7日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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