スポーツ×ブロックチェーンがもたらす価値

「ブロックチェーン活用術」第8回 - ブロックチェーンと親和性の高い分野との融合が生み出す新たな社会的価値について、スポーツの例から解説する。

ブロックチェーンと親和性の高い分野との融合が生み出す新たな社会的価値について、スポーツの例から解説する。

「スポーツ×ブロックチェーン」

ブロックチェーンはスポーツ分野にも広がりを見せている。グッズの購入や選手獲得の決裁手段として仮想通貨を利用する事例や、転売を抑止する電子チケットなどが代表的だ。こうした事例にとどまらない。ブロックチェーンで創出した仕組みが新たなインフラとして定着し、これまでにない価値を生み出す可能性もある。

一例が地域通貨だ。地域通貨の目的の1つに地域の活性化が挙げられる。スポーツを中心としたコミュニティーの愛着心(エンゲージメント)の高さはその通貨の利用の拡大や継続性に大きく影響する。スポーツ特有の盛り上がりに加え、チームや競技に対する愛着心は、地域通貨の利用の定着と非常に親和性が高い。

さらに「スポーツ×ブロックチェーン」ならではのアイデアで、愛着心をより高めることができる。例えば、海外で広まりつつある有名選手による独自トークン(電子コイン)の発行や購入額に応じた運営権の付与といった手法だ。これを地域通貨に応用することが考えられる。

新たな社会的価値をもたらすブロックチェーン

今後の可能性としては、サッカーの欧州ビッグクラブが開催したハッカソン(ソフト開発イベント)で出たアイデアが興味深い。得点時などにその時の映像を埋め込んで通貨を発行する。金銭的な価値だけでなく、コレクションしたいという感情にも働きかけるのである。これを取り入れれば、より利用者の愛着心が高い地域通貨が生まれるのではないだろうか。

具体的には、スポーツチームと自治体が提携しゴールシーンの映像などのデジタルコンテンツを提供し、自治体はデジタルコンテンツを付加して地域通貨を発行する。仕組みとしては、プライベート型のブロックチェーンにして発行時期をスポーツチームや自治体が主導できる形にする。こうすることで、地域住民として単に地域通貨を購入するだけでなく、コレクション感覚でそれを集める層が現れ、利用者が増加していく。その結果、スポーツチーム、自治体、購入者の間で好循環が生まれ、地域活性化という目的が果たされる。

ブロックチェーンの神髄は、それによって生み出された仕組みが定着していくことで新たな社会的な価値をもたらすことであると考える。そのためには、スポーツなどのブロックチェーンと親和性の高い分野との融合が欠かせない。

「スポーツ×ブロックチェーン」の活用例

有名選手によるトークン発行
有名選手との交流会への参加権や
特典グッズの購入権の付与
ファンによるリーグ運営
購入額に応じたリーグ運営権の付与
チームによる仮想通貨の発行
仮想通貨発行時期の工夫
金銭+感情にも働きかける仕組み

日経産業新聞 2018年11月13日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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