売上税・サービス税法案等の概要
マレーシアニューズレター - 2018年9月1日から導入が予定されている売上税・サービス税(SST)につき、7月31日に以下の法案が議会に上程されています。
2018年9月1日から導入が予定されている売上税・サービス税(SST)につき、7月31日に以下の法案が議会に上程されています。
- GST(Repeal) Bill 2018
- Sales Tax Bill 2018
- Service Tax Bill 2018
- Customs (Amendment) Bill 2018
- Free Zones (Amendment) Bill 2018
このうち、1. GST廃止法案、2. 売上税法案、3. サービス税法案について、主要なポイントとKPMGのコメントを取りまとめました。
GST廃止法案
施行日 | 大臣の定めによる |
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最終のGST申告書の提出及びGSTの支払 |
これは、関税局が最終のGST申告について納税者に120日の猶予を与えるものです。 |
仕入GSTの申告と還付 |
GST登録業者は、指定日から120日以内に申告を行うことにより仕入GSTの控除を取る最後の機会が与えられています。未申告の仕入GSTを漏れなく取り込むとともに、過大請求とならないよう適切にレビューを行うことが大切です。 |
負債の継続等 |
長期間滞留している還付等については、新税法のもとでも継続されるように見えます。従って、新税法の適用後であっても、旧売上税の下でのSpecial Refund については、引き続き検討対象となると思われます。 |
レビュー中の申請等 | 関税局長がレビュー中の各種申請については、あたかもGST法案が廃止されていないかのように、取り扱われる 申請書は、指定日より前に提出する必要があります。 |
不服申立 | GST法の下で申請中の不服申し立てについては、継続して検討対象となる |
売上税法案
施行日 | 大臣の定めによる(効力発生日) | |
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売上税の適用対象 |
免税物品は今後公表される細則(省令・規則)で明らかになる予定です。 |
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売上税の課税標準 |
i. 課税物品の製造目的以外で使用される
売上税は一段階課税であるため、課税標準の正確性が重要となります。過少申告はペナルティが課せられるため、場合によっては関税局に確認することも必要です。 |
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課税タイミング | 国内製造 | 課税物品の販売時点、処分時点もしくは原材料以外の用途で最初に使用した時点 |
移行措置 | (支払/請求が2018年6月1日から施行日以前になされたが、出荷が施行日以後に行われる場合)
課税時点をシステムや請求日データ、支払日データに依拠している場合、売上税が適切なタイミングで課されているか確認する必要があります。 |
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請求書 | 大臣の定める所定のフォームによる 細則で定められるフォームに留意し、適用初日から適切な請求書が発行できる体制を準備する必要があります。違反の場合はRM30,000以下の罰金もしくは2年以下の禁固、またはその両方が課せられます。 |
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登録遅延ペナルティ | RM30,000以下の罰金もしくは2年以下の禁固、またはその両方 | |
申告遅延ペナルティ | 悪質な場合、RM50,000以下の罰金もしくは3年以下の禁固、またはその両方 | |
納付遅延ペナルティ | 悪質な 場合 |
RM50,000以下の罰金もしくは3年以下の禁固、またはその両方 |
懈怠の 場合 |
最初の30日・・・未払税額の10% 次の30日・・・・・未払税額の15% 次の30日・・・・・未払税額の15%(最大40%) |
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租税回避行為 | 初犯・・・税額の10~20倍の罰金もしくは5年以内の禁固、またはその両方 2回目・・・税額の20~40倍の罰金もしくは7年以内の禁固、またはその両方 |
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更正期間 | 6年間 | |
監査証明 | 保管が必要な記録に関して、関税局長官は公認会計士による監査証明を毎年提出するよう登録事業者に要求することができる |
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免除措置 |
原材料/部品/パッケージの免除については、今後の細則で明らかになる予定です。 |
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払戻 | 売上税を課した物品を事後的に輸出した場合、払戻請求が可能 詳細な手続きについては今後の細則で明らかになる予定です。コスト抑制のため、当該措置の利用も検討する余地があります。 |
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還付 | 過払い、もしくは過誤による納付は、1年以内であれば所定の様式・方法により還付申請が可能 GSTの還付可能期間は6年でしたが、売上税では1年以内とされています。 |
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照会(ルーリング) | 以下の事項について、関税局へ照会(ルーリング)可能 売上税は新たに導入される仕組みであることから、照会(ルーリング)の利用も検討する余地があります。 |
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移行措置 | 登録 | 施行日以前において、一定金額を超える課税物品を製造する場合 (i)現行のGST登録事業者 - 施行日に登録されたとみなす 登録遅延はペナルティが課せられるため、現行のGST登録事業者は、関税局の自動登録の状況を確認する必要があります。 |
長期契約 | 2018年6月1日以前に締結し、施行日以降に終了する契約の場合
施行日をまたぐ取引については、不正確な売上税の支払を避けるため、慎重に検討する必要があります。 |
KPMGのコメント
- 売上税法案(2018)の内容は、GST法と旧売上税法(1972)の両方の要素を組み合わせたものとなっています。そのため、旧売上税法に対応したシステムでは、新法に十分対応しきれない可能性があります。
- 売上税法案は基本法であり、詳細は今後の細則を待つことになります。とりわけ、免税措置に関する細則は、コストを抑えるうえで重要です。製造業者の原材料、部品の免除申請について、最初の月は自動的に承認されるとアナウンスされましたが、まずは免除が認められる原材料、部品を識別し、申請する必要があるので注意しなければなりません。オンラインで提出が必要な情報や資料の詳細は明らかになっていませんが、少なくとも旧法で求められていた情報・資料を事前に準備しておくことが望まれます。
- GSTやサービス税と異なり、売上税は支店単位やグループ単位での登録は認められず、会社単位での登録になると考えられます。異なる場所に複数の工場がある場合など、各拠点からどのように情報を入手し、どのように会社単位での申告書を作成するか、検討しておく必要があります。
- 罰則は旧法より厳しくなっています。さらに、関税局の更正期間も従前の3年間から6年間に延長されている点も留意しなければなりません。
サービス税法案
施行日 | 臣の定めによる(効力発生日) | |
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課税サービス | 大臣によって規定される 課税サービスの詳細は、今後公表される細則(省令・規則)で明らかになる予定です。 |
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課税サービスの価値 |
サービス税は一段階課税であるため、課税標準の正確性が重要となります。過少申告はペナルティの対象となります。 |
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課税タイミング | 一般 |
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移行措置 | (契約等が2018年6月1日から施行日までの間に締結され、課税サービスが施行日以降に提供される場合)
課税時点をシステムや請求日データ、支払日データに依拠している場合、サービス税が適切なタイミングで課されているか確認する必要があります。 |
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請求書 | 大臣の定める所定のフォームによる 細則で定められるフォームに留意し、適用初日から適切な請求書が発行できる体制を準備する必要があります。違反の場合はRM30,000以下の罰金もしくは2年以下の禁固、またはその両方が課せられます。 |
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登録遅延ペナルティ | RM30,000又は2年以下の禁固、またはその両方 | |
申告遅延ペナルティ | 悪質な場合、RM50,000以下の罰金もしくは3年以下の禁固、またはその両方 | |
納付遅延ペナルティ | 悪質な場合 | RM50,000以下の罰金もしくは3年以下の禁固、またはその両方 |
懈怠の場合 | 最初の30日・・・未払サービス税額の10% 次の30日・・・・・未払サービス税額の15% 次の30日・・・・・未払サービス税額の15%(最大40%) |
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租税回避行為 |
上記の罰則規定は現行のGSTとほぼ同様のものであり、関税局は厳しく対処するものと思われます。 |
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更正期間 | 6年間 | |
監査証明 | 保管が必要な記録に関して、関税局長官は公認会計士による監査証明を毎年提出するよう登録事業者に要求することができる | |
免除措置 |
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還付 | 過払い、もしくは過誤による納付は、1年以内であれば所定の様式・方法により還付申請が可能 GSTの還付可能期間は6年でしたが、サービス税では1年以内とされています。 |
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還付サービス税の相殺(Contra) | 関税局長は、以下の理由で顧客に返還したサービス税に関し、サービス税の申告書において相殺することを認める可能性がある 上記申請は、サービス税の支払から1年以内に行う必要がある点に留意が必要です。 |
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照会(ルーリング) | 以下の事項について、関税局へ照会(ルーリング)可能 サービス税は新たに導入される仕組みであることから、照会(ルーリング)の利用も検討する余地があります。 |
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移行措置 | 登録 | 施行日をまたぐ課税サービスを提供している場合 登録遅延はペナルティが課せられるため、現行のGST登録事業者は、関税局の自動登録の状況を確認する必要があります。 |
長期契約 | 2018年6月1日以前に締結し、施行日以降に終了する契約の場合
施行日をまたぐ取引については、不正確なサービス税の支払を避けるため、慎重に検討する必要があります。 |
KPMGのコメント
- サービス税法案(2018)の内容は、GST法と旧サービス税法(1975)の両方の要素を組み合わせたものとなっています。そのため、旧サービス税に対応したシステムでは、新法に十分対応しきれない可能性があります。
- サービス税法案は、基本法であり、詳細は今後の細則を待つことになります。新税制を実施する上で必要な細則(例えば、課税対象サービスの一覧やタックスインボイスの様式、申請書など)の動向に注意する必要があります。
- 罰則は旧法より厳しくなっています。さらに、関税局の更正期間も従前の3年間から6年間に延長されている点も留意しなければなりません。
- 登録事業者の保存記録に対する公認会計士の監査証明が、この法案における新規の要求事項となっています。外部の公認会計士が要求される保証水準やこの監査証明書がどのように機能するかは現時点では未定です。