コーポレートガバナンス Overview 2017 - 深化するコーポレートガバナンスと今後の展望 -

2017年時点のコーポレートガバナンス改革、資本生産性改善、コーポレートガバナンス・コードのコンプライ・オア・エクスプレインの現状を解説するとともに、コーポレートガバナンス・コード導入による日本企業の変化、具体的な改善策、企業と機関投資家との意識の乖離などを考察します。

コーポレートガバナンス改革、資本生産性改善、コーポレートガバナンス・コードのコンプライ・オア・エクスプレインの現状を解説します。

日本企業のガバナンスは、一連のコーポレートガバナンス改革を経て大きく変化してきました。これをコーポレートガバナンス・コード対応のための一過性のブームで終わらせることなく、機関投資家との建設的な対話から「気づき」を得て、欧米企業と伍して果敢にリスクテイクを行うことが重要と考えます。また、投資・事業再編を進め、収益力の改善と持続的な成長のために、コーポレートガバナンスを継続的に深化させていくことが求められています。
「コーポレートガバナンス Overview 2017」の発行にあたっては、上場企業と機関投資家の変化を観察するため、上場企業のコーポレートガバナンス担当役員および機関投資家の最高投資責任者(CIO)の皆様のご協力をいただき、それぞれコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードおよび企業との対話についての意識調査を実施しました。その結果、企業と機関投資家のいずれも、コーポレートガバナンス・コード改革による変化を実感していることが判明しましたが、それと同時に両者の視点の違いについても明らかとなりました。企業と機関投資家の意識の違いは、両者の対話に当たっての課題を浮き彫りにするものであり、2017年版では、こうした点を中心に、KPMGジャパンにおけるコーポレートガバナンスに関係する各分野の専門家が分析・考察を提供しています。

コーポレートガバナンス改革における具体的な取り組みと企業の変化

2017年、コーポレートガバナンスの枠組みに大きな変化はなかったものの、コーポレートガバナンスの実効性を高めるための重要な議論は継続的に進められています。
具体的には、(1)機関投資家のスチュワードシップ活動の強化、(2)企業情報開示の充実、(3)役員報酬改革によるインセンティブの強化、(4)相談役・顧問に関する改革などです。
また、企業によるコーポレートガバナンス・コードの内容に沿った対応にも進捗がみられています。
機関投資家側からみても、企業が「投資家との対話」や「株主価値、資本生産性を意識した経営」に取り組んできていると感じている模様です。

投資家の期待を踏まえた企業の具体的な課題

KPMGが機関投資家向けに実施した意識調査では、機関投資家側が重視する項目のいくつかが企業側でも課題として認識されていることが分かりました。
その典型例が、「取締役会実効性評価」と「最高経営責任者等の後継者の計画(サクセッションプラン)」ですが、多くの機関投資家が、ガバナンス情報として、そのほかにも「社外取締役の発言状況」、「取締役、執行役員の選任理由」、「役員報酬の方針」、「相談役・顧問などの職務内容や処遇等」、「取締役会の構成についての考え方」、「取締役会議長による取締役会の運営方針」などの情報をより充実させるべきと回答しています。
多くの項目において、自己評価が前提となっていますが、2017年はさらに外部専門家に評価を関与させる企業が増えると予想されています。今後毎年外部専門家を活用するということはコスト面からも考えにくいですが、数年に1回のペースで外部専門家を活用するというパターンの増加は想定されそうです。

リスクテイクを支える取締役会に向けた改革と今後の展開

取締役会改革は「形の改革」については順調に進捗しているものの、「運用の改革」やサクセッションプラン等の「人材の改革」についてはまだ各社の進捗に濃淡がみられます。
一方で、コーポレートガバナンスに積極的に取り組んでいる企業は、取締役会が自社の企業価値向上により貢献するために、改革をさらに先の段階に改革を進めようとしています。
取締役会改革の目標が、企業価値向上に貢献する取締役会を実現することであるとするならば、今後進むであろう取締役会改革の中でキーワードとなってくるのは、「リスクテイク」です。
そのためには経営陣幹部を中心とした執行側にリスクテイクを促し、また執行側のリスクテイクおよびリスクマネジメントの状況をモニタリングするような取締役会の実現が必要となります。

資本生産性と企業価値の関係

資本生産性向上に向けて、企業側が取組みを強化した、または、今後強化する予定のある内容について意識調査したところ、「ROE、ROICなど資本生産性指標を活用したKPI設定と社内での運用」や「政策保有株式の保有方針に関する方針」、「株主還元」が挙げられています。
一方、機関投資家に対しての調査では、資本生産性向上に向けて企業側が取組みを強化すべきであると考える内容について「ROE、ROICなど資本生産性指標を活用したKPI設定と社内での運用」、「経営層における資本コストに対する意識の共有」、「事業ポートフォリオの再構築・事業別採算管理」が挙げられています。
両面ともに1位は同じでしたが、企業側が43%であったのに対して、機関投資家は82%であることからも、問題意識の大きさに違いがあることが見て取れます。

レポートの全文についてはダウンロードPDFをご参照ください。

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