Boardroom Questions パリ協定:気候変動に対する国際的な合意
Boardroom Questions パリ協定:気候変動に対する国際的な合意
「パリ協定」が2016年11月4日に発効しました。パリ協定には、気温上昇を2°C未満に抑え、さらに1.5°C未満に抑えるように「最大限の努力」を行うといった合意事項が含まれています。これに伴い、企業には様々なリスクやビジネス機会が生じることが予想されます。企業には、「2°Cシナリオ」を前提に、リスクやビジネス機会にいかに対応すべきかについて戦略的に検討することが求められます。
パリ協定はビジネスにとって何を意味するのか?
2015年12月、CO2排出の削減や気候変動に対応するための道標となる協定に世界各国が合意しました。この協定は、パリで開かれた気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたため、パリ協定と呼ばれています。
なぜパリ協定が必要なのか?
- 2°Cの気温上昇で壊滅的な影響が生じる可能性があることが、科学者により試算されている。
- 2100年までに世界の気温が産業革命前と比較して4°C上昇する見込みである。
- 2015年は観測史上「最も暑い年」であった。世界気温が最も高かった上位15の年のうち14は2000年以降に記録されている。
- 世界経済フォーラムでは、気候変動の抑制や適応に係る失敗が、潜在的に多大な影響を及ぼすグローバルリスクとして挙げられている*。
* WEF Global Risks Report 2016
各国は何について合意したのか?
- 気温上昇を2°C未満に抑え、さらに1.5°C未満に抑えるよう、「最大限の努力」をする。
- 2050年から2100年の間に、カーボンニュートラル(CO2排出量の実質ゼロ化)を達成する。
- すべての国々がCO2排出の削減目標を定め、また5年ごとに見直す。
- 気候変動に対処するための資金として、2020年までに毎年、裕福な国は貧困国に対して1,000億ドルを拠出する。
企業は何を予測すべきか?
- CO2排出を制限しエネルギー効率を高めるための厳格な法令の整備
- 炭素税や排出量取引制度などを通じた炭素の価格付け
- 排出に係る報告の義務化
- 気候変動により生じる財務リスクの開示に係るプレッシャー
- 低炭素社会における大きなビジネス機会
- 低炭素製品やサービスへのインセンティブの増大
- 低炭素サプライヤーに対する需要の増加
- バリューチェーン全体の排出の管理に対するプレッシャー
誤った対応から起こり得るビジネスリスク
- 排出量の大きい企業にとってのコスト上昇
- 新たな規制への違反に対する罰則
- 取引先の低炭素サプライヤー志向に伴う競争優位の欠如
- 株主価値に対する脅威
- ブランドや名声の失墜
潜在的な成長機会
- 低炭素社会ではイノベーションと新たな市場の創出が見込まれること
- リスクに対処することで株主を安心させることができること
- 取引先のブランド・ロイヤリティが高まり、低炭素なサプライヤーが選択されること
Boardroom Questions
戦略
- 我々のビジネスは、低炭素社会において成長する準備ができているか?
- 環境に配慮した製品やサービスのイノベーションに対する投資を行っているか?
- 排出量の削減などに関する取引先からの厳しい要求に応える準備ができているか?
- ビジネスの成長とCO2排出の削減をどのように同時に達成していくことができるか?
- CO2排出に対する将来の規制や課税、炭素の価格付けに伴うリスクを軽減するにはどうすればいいか?
オペレーション
- 我々の組織は、より厳格なCO2排出報告の義務を順守する準備ができているか?そのために適切な体制やプロセスを構築できているか?
- 我々の組織は、気候変動により生じる財務リスクに対して分析、測定および報告する準備ができているか?
- 我々はレピュテーションリスクにさらされているか?
(例:環境に配慮したクリーンなエネルギーを利用していない) - 我々のビジネスやサプライチェーンは、異常気象や水不足、また社会不安に対する影響をどのくらい受けやすいのか?
- 我々がビジネスを行っている国々により合意されたCO2排出削減のコミットメントは、我々の組織にどのような影響を及ぼすのか?
排出量取引制度および炭素税の導入に係る各国・地域の状況
経営層はどのような対策を検討すべきか?
- 気候変動に伴う物理的・社会的リスクに加え、レピュテーションリスクや法律上・商業上のリスクを評価する
- CO2排出量の削減に対するプレッシャーが高まるなかで、レピュテーションを守り、さらに向上を図る
- CO2排出量を削減するとともに、測定・管理・報告する体制を見直し、改善する
- 低炭素社会で成長し繁栄できるポジションを確立するために企業戦略を見直す
- 気候変動に伴って生じる財務リスクを特定し開示するシステムやプロセスを構築する
- これらの対策を実行するためのリソースと能力を確保する
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