2016年4月に開催された保険契約に関するIASB会議の概要

IASB Board Meeting Flash - 2016年4月に開催された保険契約に関するIASB会議の概要が記載されています。

2016年4月に開催された保険契約に関するIASB会議の概要が記載されています。

2016年4月、IASBは2015年12月に公表した公開草案(ED/2015/11)「IFRS第9号『金融商品』のIFRS第4号『保険契約』との適用(IFRS第4号の修正案)」に寄せられたフィードバックに基づいて、以下に関する審議を行いました。

  • IFRS第9号適用の一時的免除:適格要件
  • IFRS第9号適用の一時的免除:開示
  • 上書きアプローチ

1. IFRS第9号適用の一時的免除:適格要件

2015年12月に公表された公開草案(ED/2015/11)「IFRS第9号『金融商品』のIFRS第4号『保険契約』との適用(IFRS第4号の修正案)」(以下、IFRS第4号の修正案)は、企業の支配的活動がIFRS第4号の範囲に含まれる契約を発行することである企業について、IFRS第9号適用の一時的免除を認めることを提案しています。支配的活動であるか否かは、一時的免除がなければ企業がIFRS第9号の適用開始を要求される日に、IFRS第4号に含まれる契約から生じた負債の帳簿価額と企業の負債の帳簿価額合計(IFRS第4号に含まれる契約から生じた負債の帳簿価額を含む)との比較に基づいて評価されます。
IFRS第4号の修正案は、定量的な規準値は示していないものの、例示として負債の帳簿価額合計に対するIFRS第4号に含まれる契約から生じた負債の帳簿価額の割合が75%の場合には支配的ではないと示しています。
 
このIFRS第9号適用の一時的免除の適格要件の提案に対しては、適用範囲が狭すぎて、「純粋な保険会社」が適用することができないというフィードバックが寄せられました。
 
また、評価基準日は、IFRS第9号の強制適用日である2018年1月1日よりも前にするべきであるという意見も寄せられました。

そこでIASBスタッフは、IFRS第9号適用の一時的免除の適格要件を見直し、以下を提案しました。

項目 IASBスタッフの提案
適格要件 企業がIFRS第9号適用の一時的免除を適用するための要件は、以下の通りとする。
  1. 過去にIFRS第9号のどの版も適用したことがない(純損益を通じて公正価値で測定するものとして指定した金融負債に係る利得及び損失の表示に関する要求事項のみを適用する場合は除く)、という要件は維持する
  2. 企業の活動は主として以下から構成される保険に関連している、という要件に修正する
    (a)企業の負債の帳簿価額合計に対して重要な割合を占める負債を生じさせるIFRS第4号の範囲に含まれる契約の発行、及び
    (b)IAS第39号「金融商品:認識と測定」のもとでFVTPLで測定される投資契約の発行
企業の活動が主として保険に関連しているか否かの評価

支配比率={(保険に関連する活動から生じる負債)+(当該活動に関係するその他の負債)}÷企業の負債の帳簿価額合計

  • 保険に関連する活動から生じる負債は、上記の2(a)及び(b)の負債である
  • IASBは、保険関連の活動に関するその他の負債の例示を提供しなければならない

さらに、支配比率が以下のいずれかの場合に、企業の活動は主として保険に関連しているとみなされる。

  • 支配比率が90%超である
  • 支配比率が80%超90%以下であり、かつ保険に関連しない重要な活動がないことを企業が証明できる

評価日

  1. 一次評価:企業は2015年4月1日から2016年3月31日までの年次報告日(すなわち、評価日)における負債の帳簿価額を使用して支配比率を計算しなければならない。
  2. 二次評価:ただし、評価日までの年次期間における市場変動によって企業の支配比率に重要な影響が生じる場合(すなわち、企業の負債の帳簿価額に影響を与える場合)、企業は評価日以前の3年間の年次財政状態計算書の帳簿価額の平均を使用して支配比率を計算しなければならない。
 
 
IASBは、IFRS第9号適用の一時的免除の適格要件及び企業の活動が主として保険関連であるか否かの評価について、IASBスタッフの提案に同意しました。IASBはまた、2015年4月1日から2016年3月31日までの年次報告日における支配比率の計算により評価することについても同意しました。

2. IFRS第9号適用の一時的免除:開示

IFRS第4号の修正案は、IFRS第9号適用の一時的免除を適用する企業と適用しない企業との間の比較可能性を考慮し、以下を含む開示を提案しています。

  • IFRS第9号のもとで、「元本と利息のみ」(SPPIテスト)の要件を満たさないためにFVTPLで測定される金融資産について、報告日における公正価値及び報告期間における公正価値変動の開示
  • IFRS第9号のもとで、SPPIテストを満たし、かつ、トレーディング目的で保有されたり、公正価値ベースで管理されていない金融資産について、信用リスク情報
  • IFRS第9号適用の一時的免除の適格要件を満たすと判断した方法

開示案に対して、財務諸表作成者は過度な負荷であると考えましたが、財務諸表利用者は支持を表明しました。ただし、財務諸表利用者は、予想信用損失や定量情報を含むIFRS第9号の情報については追加の開示が必要であると考えました。

IASBスタッフはこれらのフィードバックを検討し、以下を提案しました。

項目 IASBスタッフの提案
SPPIテストを満たさない金融資産の公正価値

IFRS第4号の修正案第37A項(c)を修正し、以下のそれぞれについて報告日における公正価値及び報告期間における公正価値変動を開示することを要求する。

  • SPPIテストを満たさない金融資産
  • その他のすべての金融資産

IAS39号の帳簿価額が公正価値の合理的な近似値である場合には、企業はIFRS第7号「金融商品:開示」第29項(a)に従い、公正価値を開示する必要はない。

IFRS第4号の修正案第37A項(c)に追加して、財務諸表利用者が金融資産の性質及び特徴を理解するために十分な詳細さで当該情報を表示することを要求する。
SPPIテストを満たす金融資産の信用リスク IFRS第4号の修正案第37A項(d)に追加して、報告日において信用リスクが低くない当該開示の対象となる金融資産について、企業は公正価値及びIAS第39号に基づく帳簿価額の総額を開示する。
IFRS第9号適用の一時的免除の適格要件

IFRS第9号適用の一時的免除を適用している事実及び一時的免除の適格要件を満たすと判断した方法についての開示要求は維持する。

さらに、企業は以下を開示しなければならない。

  • IFRS第4号の範囲に含まれる契約から生じる負債を除く、支配比率の分子に含まれる負債
  • 支配比率が80%超90%以下である場合、企業の活動が主として保険に関連すると決定するために使用した情報
その他の開示 連結財務諸表では提供されないが、当該期間の個別財務諸表において一般に入手可能なIFRS第9号に関する情報を参照するように、追加で要求する。

 

IASBは、IASBスタッフの提案に同意しました。ただし、IFRS第9号適用の一時的免除の適格要件に関する開示については明確化(支配比率が90%超ではない場合のみ、企業はIFRS第4号の範囲に含まれる契約から生じる負債を除く、支配比率の分子に含まれる負債を開示する)が必要である点について同意しました。

3. 上書きアプローチ

IFRS第4号の修正案が提案する上書きアプローチは広く支持されましたが、その一方で、適格資産の要件及び包括利益計算書における上書き調整の効果の表示方法について、一貫した適用がなされないという懸念も示されました。

IASBスタッフはフィードバックに基づいて、以下を提案しました。

項目 IASBスタッフの提案
上書きアプローチの適格金融資産及び関連する開示

以下について、IFRS第4号の修正案の提案を確認する。

  • 上書きアプローチの適格要件(第35B項)
  • 過去に認識した金融資産の指定要件(第35E項(a)-(c))
  • 特定の開示(第37C項、第37D項(a)-(d))

IASBスタッフはIASBに対して、さらに以下を提案しました。

  • 適格金融資産には、企業が規制、信用格付け又は内部資本要件目的で保有する余剰資産も含まれることを明確化する
  • 同一の報告企業グループの中で、IFRS第4号の範囲に含まれる契約に関連するものとして指定された金融資産を保有する企業と、保険契約を発行する企業が異なる場合には、上書きアプローチの適用対象となる金融資産の決定の基準について開示を要求する
上書きアプローチの表示

上書きアプローチの適用対象となる金融資産の利得及び損失の表示に関するIFRS第4号の修正案第35C項及び第37D項(e)の規定を修正し、以下を要求する。

  • 以下を表示する
    • 純損益において、IFRS第9号の適用に影響する情報を、単独で、上書き調整の独立項目として表示する
    • 包括利益において、IAS第1号「財務諸表の表示」と整合的に、上書き調整額を他のOCI項目とは別に表示する
  • 財務諸表注記において、上書きアプローチの影響を個別の項目として開示する
上書きアプローチのその他の開示

以下について、IFRS第4号の修正案における提案を確認する。

  • 上書きアプローチの適用開始及び適用終了(第35D項、第35E項(d)、第35F項)
  • 税引前損益に対する上書き調整の適用(BC第24項)
  • 上書きアプローチの移行規定(第41K項)

 

IASBは、IASBスタッフの提案に同意しました。IASBはまた、IFRS第4号の範囲に含まれる契約に関連するものとして指定された金融資産をある企業が保有するが、保険契約は別の企業が発行する場合に、両企業の関連の性質について追加開示を求めることについても同意しました。

4. 今後のスケジュール

IASBは、2016年5月の会議において、残りの技術的論点について審議する予定です。IFRS第4号の改訂の最終化は2016年9月になる見込みです。

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