2016年1月に開催された保険契約に関するIASB会議の概要

IASB Board Meeting Flash - 2013年に公表した公開草案「保険契約」(ED/2013/7)に関するIASB会議の概要が記載されています。

2013年に公表した公開草案「保険契約」(ED/2013/7)に関するIASB会議の概要が記載されています。

IASBは2016年1月に、2013年に公表した公開草案「保険契約」(ED/2013/7)について、以下の論点の審議を行いました。

  • 集約のレベル
  • 裁量により変動するキャッシュフロー

1. 集約のレベル

(1)不利な契約における集約のレベル

保険契約を会計処理する際の集約のレベルについて、IASBは過去複数回にわたり審議しており、2014年6月の会議では、「保険契約に関する基準書の目的は、個々の保険契約の測定の原則を提供することであるが、その目的を達成できるのであれば、企業は保険契約を集約することができる」ことを明確にしました。保険契約に関する基準書の目的を定めることは、保険契約の当初認識時における契約上のサービス・マージン(CSM)の測定、事後測定におけるCSMの調整や当期純利益への認識を決定する際に有用であるとIASBは考えていましたが、市場関係者からは依然として曖昧で、当該決定事項の解釈の不明瞭さや事業運営を適切に反映していないのではないかといった懸念が示されました。
 
2016年1月のIASB会議では、契約グループが不利であるか否かを決定する際に使用される集約のレベルを特定するべきか否かについて、検討が行われました。
 
IASBスタッフは、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」における議論が集約のレベルに関するガイダンスの開発に使用できると考え、以下を提案しました。
  • 不利な契約に係る損失は、契約グループのCSMがマイナスになった場合にのみ認識されなければならない。契約グループは、当初認識時において以下の契約から構成される。
    • 企業が予想するキャッシュフローが、主要なリスクドライバーに対し、金額及び時期について同様に反応する
    • 期待収益性が類似している(すなわち、保険料に対するCSMの割合が類似している)
IASBは、IASBスタッフの提案に同意しました。

(2)CSMの配分における集約のレベル

2014年5月の会議においてIASBは、CSMの残高について、保険契約により提供されるサービスの移転を最も適切に反映する規則的な方法で、残存カバー期間にわたって当期純利益に認識しなければならないと決定しました。2016年1月の会議では、CSMの当期純利益への配分について、企業が保険契約をグループ化する場合にどのようにこの原則を適用するかに関するガイダンスを検討しました。

IASBは2016年1月の会議期間中に2度にわたり本論点を審議し、IASBスタッフはIASBの1度目の議論を受けて提案を以下の通り修正しました。

  • CSMを当期純利益に配分する目的は、個別契約単位でサービスの提供を最も適切に反映する方法でカバー期間にわたりCSMを認識することである、と説明するガイダンスを追加する。報告期間の末日より後において契約により提供されるサービスがもはやない場合には、CSMの全額を認識しなければならない(したがってCSM残高はゼロとなる)。
  • 上記の目的に合致する場合には、CSMの配分について、契約をグループ化することができる。以下の場合には、目的に合致するとみなす。
    • 当該グループに含まれる契約から生じる、企業が予想するキャッシュフローが、主要なリスクドライバーに対し、金額及び時期について同様に反応し、当初認識時において期待収益性が類似している、かつ、
    • 企業は、予想デュレーション及び報告期間の末日以降に残存する契約の量を反映する方法で、CSMの各期への配分を調整する

IASBは、IASBスタッフの提案に同意しました。

(3)規制の影響

一部の国や地域では、規制により保険料率が影響を受けるため、市場関係者の中には集約のレベルの決定における例外を設けるべきであると提案する者がいました。

IASBスタッフは、たとえ規制要因であったとしても、収益性の差は実際の経済性を反映したものであり、また、例外を設けることで保険契約に関する基準書の複雑性が増すことを懸念し、以下を提案しました。

  • 規制が契約の価格に影響を与える場合について、不利な契約の決定又はCSMの配分について集約のレベルに例外を設けるべきではない。

IASBは、IASBスタッフの提案に同意しました。

2. 裁量により変動するキャッシュフロー

2015年11月の会議においてIASBは、有配当契約を保険契約の一般的な測定モデル(ビルディング・ブロック・アプローチ、BBA)で測定する場合に、CSMの調整として認識する裁量によるキャッシュフローの変動を特定する方法について審議しました。この時、IASBスタッフは、BBAに基づいてCSMの調整として認識されるのは、(金利変動により相殺される部分を除く)裁量により変動すると予想されるキャッシュフローの変動でなければならないと提案しました。IASBは、裁量により変動するキャッシュフローを他のキャッシュフローとは区別するという取扱いについては原則として同意したものの、区別する方法については決定に至らず、IASBスタッフに対して追加の調査を指示していました。

2016年1月の会議では、市場変数の変動と裁量による変動の影響を区別するアプローチについて検討が行われ、IASBは以下の事項を決定しました。

  • 企業は保険契約の当初認識時において、契約に基づく裁量をどのように判断するのかを特定し、当該特定した方法を使用して裁量により変動するキャッシュフローの影響を測定しなければならない。裁量により変動するキャッシュフローの影響は、BBAのもとでは将来サービスに関連するものとみなされるため、CSMにおいて認識される。

3. 今後のスケジュール

IASBは、予定していた技術的な再審議を完了しました。2016年2月の会議において、新しい保険契約に関する基準書の投票作業に着手することの可否について審議する予定です。

新しい保険契約に関する基準書が2016年末ごろ完成するとすれば、その適用日は2020年または2021年1月になると予想されます。

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