andrea godfrey

Andrea Godfrey

Partner
Head of Integrated International Tax
KPMG in Cambodia

So Dary

So Dary

Partner
Head of Corporate Services
KPMG in Cambodia

2025年7月8日

By Andrea Godfrey & So Dary,  KPMG in Cambodia

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世界的な貿易摩擦の高まりの中、カンボジアの輸出主導型の経済は、アメリカの関税の引き上げによる新たな困難に直面しています。これまでは、コストの上昇や競争力の低下といった直接的な影響に関心が向かっていましたが、専門家は、移転価格に関連するより深刻な影響や、企業が迅速に対応しなかった場合の税務リスクが高まる可能性に警鐘を鳴らしています。

グローバルサプライチェーンにおけるカンボジアの戦略的重要性

カンボジアは、衣料品、消費財、電子機器といった分野で、多国籍企業にとって重要な製造拠点となっています。強固な輸出基盤と、グローバルサプライチェーンの統合が進む中で、カンボジアは貿易政策の変化に敏感な立場にあります。

短期的な影響と長期的な考慮事項

短期的な影響 長期的な考慮事項
新関税によるコスト急増 サプライチェーンの変化
アメリカからの受注の混乱や利益率の低下 アメリカ以外の市場への多角化
駆け込み出荷や値上げ等の応急措置 再投資や新規顧客の獲得
移転価格方針の陳腐化 新たな移転価格方針の策定と文書化

一例として、カンボジアの子会社がアメリカの親会社に製品を販売するケースがあります。カンボジアに対する関税が導入された場合、競争力を維持するためにカンボジア側が販売価格を下げるべきでしょうか。それともアメリカ側が追加コストを負担すべきでしょうか。どちらを選ぶかにより、誰に利益と税務負担が生じるかが変わってきます。

なぜ移転価格がより重要になるのか

移転価格は、関連会社間で各国における利益の配分を決定するルールですが、現在その重要性が高まっています。関税は企業全体の利益率を圧迫し、カンボジアを含む各国の税務当局は、その利益がどのように配分されているかを厳しくチェックしています。

カンボジアでは、関税の影響で利益率が下がったと主張する輸出企業に対して、税務当局が疑義を示す可能性があります。特に、これを裏付ける文書がない場合には注意が必要です。外国の税務当局が異なる見解を示した場合、同じ所得に対して二重に課税されるリスクもあります。

移転価格文書の作成

カンボジアの税務当局は、ここ最近で移転価格調査を強化してきており、関税による利益減少や価格変更があった場合には、さらに厳しい調査が行われれる可能性があります。

企業は、以下の対応を行うことが重要となります。

・価格変更の理由を明確に文書化する(例:新たな関税、サプライチェーンの変更等)

・コストと利益の配分を説明する分析を行う

・主要貿易相手国との事前確認制度(APA)の申請を検討する

カンボジアの輸出企業が採るべき対応

対応 なぜ必要なのか
移転価格方針の再評価 コスト上昇、利益の低下に対応する
移転価格に関する文書化の強化 税務紛争を回避し、価格設定を維持する
世界的な関税の変化のチェック 将来のコストや価格変動に備える
二国間の事前確認制度(APA)の検討 二重課税のリスクを軽減する

今後の対応

カンボジアがグルーバルサプライチェーンに組み込まれていることは、強みであると同時に脆弱性でもあります。地政学的、経済的な不確実性が高まる中、輸出企業はコスト上昇への対応だけではなく、コンプライアンスを遵守し競争力を維持するためにも、グループ内の価格戦略も調整していく必要があります。