2022年上半期、M&Aの動向は2021年の過熱ペースから減速しました。ロシアのウクライナ侵攻、インフレと金利の上昇、株式市場の弱気相場入りにより、ディールメーカーは多方面からの逆風に直面しました。

世界のディールサイズは2021年上半期から30%下落したのに対して、件数は26%減少しました。

しかし、KPMGが5月末に調査をおこなった米国のビジネスリーダー360人からの回答によれば、今年後半へと向かうなか、景気後退の懸念が拡大しつつも、M&A成立への熱はほとんど冷めていないことが明らかになりました。

2022年下半期M&Aの主要トレンド

我々が中間期におこなった調査では、企業の経営幹部の61%が、今後12ヶ月の間、自身の業界でのM&A活動が、大幅にまたはある程度増加すると見ています。なかでも、工業生産業界の回答者はもっとも強気で、全回答者の68%に及びました。一方で、次年度のM&A計画については、取引成立のための活動を増やすと回答したのは全体の51%で、ある程度増やすという回答者が46%、大幅に増やすという回答者が5%でした。

楽観的な見通しを立てている経営幹部と、より控えめな計画を立てている経営幹部が乖離して存在している原因はおもに、インフレや金利の上昇、マクロ経済の不透明感によるものです。回答者の65%が、ロシアとウクライナ間の戦争が自社のビジネスに影響を与えていると語る一方で、最大の懸念事項は依然としてインフレとそれによる経済的影響です。調査に回答した経営幹部の4分の3ほど(73%)が、インフレが原因で自社の利益率が悪化したと回答しています。また、2022年末までに景気後退する確率は50%より高いと回答した経営幹部はほぼ半数(47%)に及びました。もっとも悲観的に見ているのは消費財・小売りセクターとテクノロジー・メディア・通信セクターの経営幹部で、それぞれ回答者の60%と58%が、景気後退は2022年末までに始まるとしています。

急激な景気減速であれ、完全な景気後退であれ、M&A実行や成立がより困難になることは明白です。特に、収益のシナジーを前提としたM&Aや、ビジネスモデルの転換といった野心的な戦略目標をともなうM&Aには、トップレベルの専門性が要求されます。ディールチームにとって、ターゲットの見極め、デリジェンス、価値の創造に関する深い経験を持っていることが非常に重要になります。

見通し

今後数ヶ月間にわたり、M&Aの責任者は過去数年間にわたって慣れ親しんできたM&A環境よりも、不透明感の高い環境を乗り切る必要が出てくるでしょう。投入コストの上昇により企業の利益が圧縮され、M&Aのための資金調達コストが上昇するなか、将来的なM&Aの動向はおそらく、我々の調査回答者たちの予想から乖離し、M&Aの活動は冷え込む可能性が高いと考えられます。景気後退となれば、M&A成立はさらに減速するでしょう。

その一方で、慎重な楽観論もありえるかもしれません。失業率は低水準に留まることが予想され、このことは、2022年まで個人消費の堅調が続く良い兆候です。さらに、(特にエネルギー価格の)インフレ圧力が緩和され始めると、FRBは利上げのペースを弱めると考えられます。景気後退はまだ避けられる可能性があります。

詳細につきましては、以下のレポート全文をダウンロードしてご覧ください。

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この文書はKPMG LLPが発行した Appetite for M&A remains strong despite economic headwinds をベースに作成したものです。翻訳と英語原文間に齟齬がある場合は、当該英語原文が優先するものとします。