サステナビリティに関する報告のあり方は、金融そのものの持続可能性と強靭性のために必要なものです。これらが、責任ある投資の拡大に貢献していきます。5月13日に開催された会議により出された声明においては、国際的な協力の促進についても支持が表明されました。

G7(先進7ヵ国財務大臣・中央銀行総裁会議)の場で、国際サステナビリティ基準審議会(以下、「ISSB」)の必要性への認識がさらに高まりつつあります。すでに、2つの関係担当相会議の声明のなかで、それぞれの問題意識からの期待が表明されています。

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G7のテーマに組み込まれるISSB

3月に岸田文雄首相は、東京で開催されたIFRS財団主催のセミナーにおける挨拶*において、G7議長国である日本が、サステナビリティに関わる企業報告、そして、その企業報告を支えるための開示基準の進展に向けてリードすることを表明しました。G7は、首脳会議だけでなく、さまざまな領域ごとの担当相が別途集結し、関係するハイレベルな議論を各地で行っています。4月に札幌で開催された気候、エネルギー、環境大臣会議の声明においてISSBについて言及し、その支持が表明されています。

持続可能な金融システムの実現に必須となるもの

資本主義経済を土台とした現在社会のなかで、金融システムが持続可能であり、かつ強靭性を有することは、社会の安定とWell-beingの実現のために不可欠です。企業を取り巻くリスクや機会の要素が大きく変化し、気候変動や自然資本/生物多様性、人的資本、さまざまな場面における多様性や包摂性が、企業活動、そしてその成果としての価値の実現に大きな影響を及ぼしているなか、一貫性と比較可能性があり、かつ信頼性のある情報に対する投資家等からの希求はますます高まりつつあります。

G7財務相・中央銀行総裁会議の声明*のなかで、市場の意思決定に必要な情報の入手可能性強化に向けた取組みとして、ISSBの取組みを歓迎する旨が記載されています。そして、IOSCOの議論に対する期待も表明されています。

市場が求めている質を備えた情報を提供するためには、企業は自らの存在意義を実現する価値提供の創造プロセスのなかに、複雑化するリスク/機会への視座や管理、そして取組みの統合を加速させていかなければならないはずです。

今回の声明からは、あらためてその点が明らかになったと言えるでしょう。

G7首脳会議にむけて

広島で開催が予定されているG7に向けて、4月末に開催された経済界によるB7東京サミットで共同提言*が公表されています。持続可能性に関する共通理解を促す点からのグローバルベースラインの必要性を意識し、G7に対して「各国内においてグローバルな一貫性のあるかたちで国際基準が実施されるようにすることと、国際的な相互運用性と相互主義を確保し、断片化を回避するために、ISSBにおける今後の作業を引き続き支援することである」との記載があります。

国際的な相互理解のためには、共通言語を用いたコミュニケーションが不可欠です。今回のG7の一連の会議のなかで、ISSBのさらなる展開の必要性が多面的に明らかになりました。包括的かつ統合的な視座に基づく議論がなされるG7首脳会議においても、社会におけるさまざまな意思決定に資するサステナビリティ情報の質を高めていくための取組みや活動への支持があらためて認識され、強い支持が表明されることを期待したいと思います。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン
パートナー 芝坂 佳子

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