KPMGが小売業界幹部100名を対象に実施した調査によれば、回答者の75%が年末商戦の売り上げが自社の年間総売上高の最大40%に達すると見込んでいます。調査対象者の間では年末商戦への期待が高まっており、今年の年末商戦の売り上げが2021年実績を上回ると予想する回答は68%、前年を下回ると予想する回答は24%でした。小売業界幹部は、業界サブセクターのなかでとりわけ総合小売店が最大の伸びを示すと見ています。

ポイント

  • 消費者の購買意欲を刺激するには、積極的な販促活動が重要な役割を担う
  • 物価高や消費者の行動変化、市場の先行き不透明感が年末商戦に及ぼす影響は未知数であり、小売業者は潜在的な課題に備えておかなければならない

行方を左右するのは販促活動

物価高で消費者の家計が圧迫され続けるなか、売り手は年末商戦の販促活動に一層注力することが予想されます。回答者の73%が販促活動の拡充を計画しており、そのうち21%は販促活動を「大幅に増加させる」としています。小売業者は、販促活動で消費者の購買意欲を高め、商品在庫を多めに確保して販売につなげる必要があります。また、マーケティングのデジタル化も重要になるでしょう。およそ半数(47%)が年末商戦のマーケティング予算の50%以上をデジタルキャンペーンに費やすと回答しており、デジタル広告への支出の増加は、通常、年末商戦のEC売り上げの増加と相関しています。

余剰在庫と在庫不足が混在

サプライチェーンと在庫は、今年も小売業者に複雑な問題を引き起こしています。一部のカテゴリーでは余剰在庫を抱えたまま年末商戦に突入する一方、入荷遅延や品不足が危ぶまれるカテゴリーもあります。調査ではほとんどの回答者が入荷遅延を予想しており、遅延が2週間以上との予想は44%にのぼります。今年の年末商戦における最大の課題は、在庫商品を売りきることでしょう。回答者の56%が、最善を尽くしても年末商戦後に在庫が大幅に残ると考えています。

新年は景気後退で幕開けか

物価高や金利上昇、失業率増加などが重なり、2023年は消費者支出が逆風にさらされるとの予測もあります。今回の調査でほとんどの回答者が12ヵ月以内の景気後退を予想し、これに備えていると答えています。小売業界は費用削減、カスタマーロイヤルティ向上策への投資、在庫圧縮など、リードタイム削減策に優先的に取り組むことで景気後退の可能性に備えています。ただ、業界では景気が後退したとしても短期間であり、非中核事業からの投資引き上げやIT投資の中止など大規模な改革をするほどではないと見込んでいます。

今後への備えを

小売各社は、好調な年末商戦に期待を寄せていますが、物価高や消費者の行動変化、市場の先行き不透明感が年末商戦に及ぼす影響は、現時点で未知数です。そのため、潜在的な課題に備えて以下のようなステップを検討しておくことが重要です。

  • 物価高がもたらす需要・供給両面の課題を乗り切るために、データ分析を活用して年末商戦に照準を定めた戦略的な価格設定をおこなう
  • 多くの消費者が高価値・低価格商品を求めており、小売業界はプライベートブランド商品など価値を重視した商品の在庫を拡充することで成長の余地を見出す
  • 買い物の場所・時間・方式について消費者の希望に沿うようにオムニチャネル機能を最適化する
  • デジタルマーケティング、販促イベント、SNSを有効活用してカスタマーロイヤルティ向上に注力することで、消費者に早めの行動を促す

英語コンテンツ(原文)

Retailers hope to spark some holiday magic

お問合せ

こちらは「KPMG Japan Insight Plus」会員限定コンテンツです。
会員の方は「ログインして閲覧する」ボタンよりコンテンツをご覧ください。
新規会員登録は「会員登録する」よりお手続きをお願いします。

競合他社の方は、登録をご遠慮させていただいております。