チリ:税制改正案の公表(2022年7月1日)

2022年7月 1日にチリ財務省より税制改正の法案が公表されました。チリは2020年に税制度を改革する大幅な改正を施行していましたが、今回の改正案についても所得税から富裕税、鉱業セクターへの新税や脱税回避対策など、幅広いトピックに対する改正が提案されています。

2022年7月 1日にチリ財務省より税制改正の法案が公表されました。

この度、KPMGチリでは、2022年7月に公表された税制改正の内容をまとめたニューズレター(英語)を発行しましたのでご案内いたします。

ご参考までに、日本語訳は以下になります:

なお、当該税制改正案は2022年7月1日に公表されたものとなります。7月1日以降、国会での審議プロセスにおいて内容の変更を度々受けていることから、当該ニューズレターで記載されている情報が最新の法案とは異なる可能性があることをご留意ください。

チリ税制改正法案の大綱

2022年7月1日、チリ財務省は税制改正法案の大綱を発表しました。

税制改正法案の本文は現在非公開となっていますが、今後公開化されることが期待されます。本記事では政府が示した税制改正法案の中枢をなす6つの要素についてまとめています。

所得税制度の部分的な分割

  • 税制改正法案の大綱では、企業と株主への課税を区分する「セミ・デュアル制度」を法人へ適用する制度が想定されています。企業が支払った法人税を株主が税額控除することは認められず、双方へ課税が適用されます。
  • 企業からの資本の払い戻しまたは受取配当金に対して22%の税率が設定されます。
  • 個人所得税(IGC)の税率が22%を下回る納税者については、企業からの払い戻しまたは受取配当金に対して課税される税金額の再評価を受けることが可能となります。
  • 法人税(IDPC)の税率は全ての企業に対して一律に25%となることが想定されています。ただし、研究開発(R&D)または特定の活動に対する投資を行わない企業に対しては、さらに2%の税率が課されます。
  • 研究開発への投資のインセンティブとして、法人税に対する税額控除が8億チリペソ(約84.2万米ドル)から25億チリペソ(約260万米ドル)に引き上げられ、未使用の税務クレジットは還付が認められます。
  • 非営利企業の留保利益に対して1.8%の税率が課されます。この措置は、営業外収益が総収益の50%を超える企業に適用されます(金融機関を除く)。
  • 所得が70UTA(約4,210米ドル)を超える納税者に対する個人所得税の税率テーブルは改正され、その税率が引き上げられることが想定されています。140UTA(800万チリペソまたは約8,420米ドル)を超える所得に対する新たな最高税率は43%となります。
  • 繰越欠損金の繰越期間は無期限となります。ただし、欠損金の控除に関して重要な制限が導入され、各年度の課税所得の50%が控除限度額となります。

富裕税

  • 500万米ドルを超える資産を持つ個人に対して1%の富裕税が課せられます。
  • 14,700万米ドルを超える資産に対して1.8%の富裕税が課せられます。
  • 10万米ドルを超える資産も対象となり、こうした資産に対する特別な評価ルールが設けられることが想定されています。

大規模な鉱業に対する新たなロイヤルティーおよび鉱業所得税

  • 大規模な鉱業に対して所得に対して課税されるロイヤルティー、さらに鉱業所得に対して課税される税金を制定することが想定されています。
  • 年間5万トンを超える精銅(TMCF)を生産する鉱業会社が対象となることが想定されています。
  • この新たな税金は、売上に対して課税されるロイヤルティーを組み合わせたハイブリッドな性質を持ち合わせます。精銅が年間5万から20万トンまでの生産者に対する実質税率は1%から2%のレンジとなり、20万TMCFを超える場合は1%から7%となります。また、鉱業事業営業所得に対する税金も制定され、銅価格が1ポンドあたり2米ドルから5米ドルの場合、営業収益に対して2%から32%の税率が課税されることが想定されています。
  • 税率は銅価格の上昇に応じて引き上げられます。従って、鉱業セクターでの経済的利益の増加に応じて当該税収も増加する仕組みとなります。

免税措置に対する制限

  • 民間投資ファンドは、高リスクの資本運用(Risk Capital)を投資方針とするファンドを除き、IDPCの課税対象となります。
  • 公的投資ファンドに対してはIDPCの免税措置が維持されます。ただし、法人への利益分配を行った場合、当該配当金はIDPCの課税対象となります。また、これらのファンドの海外投資家に対する10%の税率は廃止されます。

脱税および租税回避への対策

  • 税制改正法案の大綱において、最終受益者の登録制度の創設が提案されています。これにより、企業の10%を超える出資比率を持つパートナーまたは出資者である、個人または最終納税者を、チリ税務当局が把握し利用することができるようになります。
  • 一般的租税回避否認規定は、司法でなく行政により運用されます。
  • 移転価格規制に関して、事前確認制度(APA)および補償調整処理が修正されることが想定されます。
  • また、租税回避のエリアとして認識されているものへの対応として、営業外収益の管理規則が修正されることが想定されます。
  • 債務超過に関する規則の修正が想定されます。
  • 優遇税制に関する規制の変更が想定されます。
  • 税務関連の内部告発者に金銭的な報酬を与えるため、新たに「Tax Whistleblower(税務に関する内部告発者)」なる概念を設けることが想定されます。

第2フェーズ - 個別消費税

  • 税制改正法案の大綱では、個別消費税に関する施策が検討されていることを示唆しており、今年の第4四半期に個別の法案として提出されることが想定されます。


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