子会社株式簿価減額特例 (Special Provision for Reduction of Book Value of Shares in Subsidiaries)

子会社株式簿価減額特例とは、子会社から配当を受け取った後に、その子会社株式を譲渡することにより譲渡損失を創出させる租税回避に対処するため、2020年度税制改正において創設された制度である。

子会社株式簿価減額特例とは、子会社から配当を受け取った後に、その子会社株式を譲渡することにより譲渡損失を創出させる租税回避に対処するため、2020年度税制改正において創設された制度

制度の概要

内国法人が子法人から配当等の額を受ける場合(その配当等の額に係る決議日等においてその内国法人とその子法人との間に特定支配関係(*1)がある場合に限る。)において、1.の適用要件に該当するときは、内国法人が有するその子法人の株式等の対象配当等の額に係る基準時における移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額は、2.の方法により計算した金額とされる。

(*1)  当事者間の支配関係(*2)又は一の者との間に当事者間の支配関係がある法人相互の関係

(*2)  一の者が法人の発行済株式又は配当等議決権等(自己の株式又は配当等議決権等を除く。)の50%超を保有する場合におけるその一の者とその法人との関係(直接支配関係)
((i)その一の者及びこれとの間に直接支配関係がある一又は二以上の法人又は(ii)その一の者との間に直接支配関係がある一又は二以上の法人が子法人の発行済株式又は配当等議決権等の50%超を保有するときは、その一の者はその子法人の発行済株式又は配当等議決権等の50%超の株式又は配当等議決権等を保有するものとみなされる。)

1. 適用要件

(A)>(B)である場合

(A) 内国法人が子法人から受ける対象配当等の額及び同一事業年度内配当等の額の合計額

(B)(A)の対象配当等の額及び同一事業年度内配当等の額に係る各基準時の直前においてその内国法人が有するその子法人の株式等の帳簿価額のうち最も大きいもの×10%

用語の意義

対象配当等の額 内国法人が特定支配関係のある子法人から受ける配当等の額で、完全支配関係内みなし配当等の額を除く。
完全支配関係内みなし配当等の額

子法人に法人税法第24条第1項各号に掲げる事由(みなし配当事由)(*)が生じたことに基因して配当の金額とみなされる金額

(*)その内国法人において法人税法第61の2第17項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)の規定の適用があるものに限る。

同一事業年度内配当等の額

対象配当等の額を受ける日の属する事業年度開始の日(*1)からその受ける直前の時までの間にその内国法人がその子法人から配当等の額を受けた場合(*2)におけるその受けた配当等の額(*3)

(*1)同日後にその内国法人がその子法人との間に最後に特定支配関係を有することとなった場合には、その有することとなった日

(*2)その配当等の額に係る決議日等においてその内国法人とその子法人との間に特定支配関係があった場合に限る。

(*3)完全支配関係内みなし配当等の額を除く。

2. 移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額

以下の方法により計算した金額

{(A)-(B)}÷(C)

(A) 子法人の株式等の対象配当等の額に係る基準時の直前の帳簿価額

(B) 対象配当等の額のうち益金不算入規定により益金の額に算入されない金額に相当する金額(*)

(C) 子法人の株式等の数

(*)   対象配当等の額うち、受取配当等の益金不算入外国子会社配当益金不算入制度及び現物分配による資産の譲渡 (法法62の5④)の規定により益金の額に算入されない金額

3. 適用除外要件

以下のいずれか該当する場合には、本特例は適用されない。

 

1)内国株主割合要件(90%要件)

内国法人と特定支配関係にある子法人(普通法人に限り、外国法人を除く。)の設立の時から特定支配日までの期間を通じて、その子法人の発行済株式の総数等(自己株式等を除く。)に占める普通法人(外国法人を除く。)等による保有割合が90%以上であり、かつ、これを証する書類を保存していること。

 

2)特定支配日利益剰余金額要件(*1)

特定支配日がその対象配当等の額を受ける日の属する子法人の事業年度開始の日前である場合において、(A)-(B)≧(C)であり、かつ、これを証する書類を保存していること。

(A) その子法人のその対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額

(B) (A)の事業年度終了の日の翌日からその対象配当等の額を受ける時までの間にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額の合計額

(C) その子法人の特定支配日前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額

 

3)10年超支配要件

特定支配日からその対象配当等の額を受ける日までの期間が10年を超えること。

 

4)金額要件

対象配当等の額及び同一事業年度内配当等の額の合計額が2,000万円を超えないこと。

 

なお、本特例には、上記の適用除外要件の潜脱を防止するため、内国法人が以下の子法人から対象配当等の額を受ける場合における適用回避防止規定も設けられている(*2)

  • 関係法人を被合併法人又は分割法人とする合併又は分割型分割(特定支配日と対象配当等の額を受ける日の10年前の日とのいずれか遅い日以後に行われたものに限る。)に係る合併法人又は分割承継法人である子法人
  • 関係法人から配当等の額を受けた子法人

(*1)     2022年度税制改正により、(A)の事業年度終了の日の翌日から対象配当等の額を受ける直前の時までの期間内に増加した利益剰余金の額をその原資とした場合における調整措置が手当てされた(*3)

(*2)     2022年度税制改正により、対象配当等の額に係る基準時以前10年以内に子法人による特定支配関係があった関係法人の全てが、その設立時から内国法人及びその子法人と特定支配関係がある関係法人である場合等一定の場合には、適用回避防止規定は適用されないこととされた(*3)

(*3)     これらの改正は、子会社株式簿価減額特例の創設時における本特例の適用開始時期である2020年4月1日以後に開始する事業年度において受ける対象配当等の額に遡って適用される。

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