ブラジル移転価格税制改正:OECD移転価格ガイドラインに向けた取組みについて

2022年4月12日、ブラジル政府(経済大臣を含む)と経済協力開発機構(OECD)租税行政委員会の代表者は、ブラジリアにてブラジルの移転価格制度の改正を検討する会合を開きました。この度、KPMGブラジルでは、当該会合で議論された点等を記載したニューズレター(英語)を発行いたしました。

ブラジル政府と経済協力開発機構(OECD)租税行政委員会の代表者は、ブラジルの移転価格制度の改正を検討する会合を開きました。

2022年4月12日、ブラジル政府(経済大臣を含む)と経済協力開発機構(OECD)租税行政委員会の代表者は、ブラジリアにてブラジルの移転価格制度の改正を検討する会合を開きました。この度、KPMGブラジルでは、当該会合で議論された点等を記載したニューズレター(英語)を発行いたしました。

以下はニューズレターの日本語訳になります。

ブラジル移転価格税制改正に関する最新情報、OECD移転価格ガイドラインに向けた取り組みについて

ブラジル政府(経済大臣を含む)と経済協力開発機構(OECD)租税行政委員会の代表者が2022年4月12日にブラジリアで会合を開き、ブラジルの移転価格制度の改正を検討した。

背景

2019年、ブラジルとOECD間の移転価格制度の相似点・相違点に関する共同アセスメントが発表され、ブラジル独自の移転価格制度とOECDの移転価格パラダイムとの収斂に向けた最初の分析が踏み出された。

しかし、パンデミックの発生に伴い、ブラジル税務当局(Receita Federal do Brasil-RFB)やOECDからは、2022年4月12日の会合までブラジルの移転価格制度に関する情報を耳にすることはほとんどなかった。

ブラジルの移転価格制度の改正状況

2022年4月12日に発表された情報は、ブラジルがハイブリッド移転価格制度を採用するという予想と相反するものであった。会合の情報によれば、ブラジルは移転価格に関する国際基準、すなわちOECD移転価格ガイドラインを全面的に採用する方向であることが判明した。

ブラジルの移転価格の枠組みは、以下のような特徴を持つことが期待されている。

  • 現在、ブラジルの移転価格の枠組みにはない独立企業間原則(arm’s length principle)は、インバウンドとアウトバウンドの観点から、あらゆる種類の商取引に適用される。
  • 関連者間取引を正しく区分するためには、比較可能な要素を考慮した上で、機能、リスク、資産が重要である。
  • OECD移転価格ガイドラインに含まれる移転価格算定方法と評価技法は、その適用に関するガイダンスとともに、ブラジルの移転価格法制に導入される。つまり、現代の複雑なバリューチェーンは、取引単位営業利益法(TNMM)や利益分割法(PSM)を用いることで、ブラジルの観点からより良く反映され、それにより、ブラジル子会社をグローバル移転価格モデルに統合することが可能となる。
  • 最も適切な移転価格算定方法の選択である限り、検証対象者はブラジルまたは外国のいずれでも構わない。現在RFBは、外国の財務情報などを受け入れることに苦労している。
  • ブラジルの国内総生産(GDP)に占める商品の割合が大きいことから、既存の規則を改正して、実際の独立した当事者の市場行動とより強く関連付けることを意図している。新しい規則は独立企業間原則に基づき、比較可能性の調整に関してより柔軟性を発揮することになる。
  • 移転価格のための新しい無形資産の概念が導入され、会計上の概念を超え、国際基準に沿ったものとなる。さらに、無形資産に関する移転価格制度は、DEMPE概念(開発、改良、維持、保護、利用)、比較対象の欠如に関するガイダンス、不確実性への対処方法、評価手法の適用を含むことになる。
  • 無形資産に関する移転価格制度の改正は、現行のロイヤルティ損金算入ルールの改正の引き金にもなる。
  • 企業グループ内役務提供に関する規則には、便益テスト、株主活動、役務提供の重複のほか、直接請求と間接請求の概念の導入が含まれる。低付加価値役務は、セーフハーバーとして機能する。
  • ブラジルは、現行の規則をOECDの関連者間の費用分担契約(CCA)の概念に合わせ、サービスCCAと開発CCAに関するガイダンスや、CCAへの参入と撤退の際の独立企業に即した対価を整備する意向である。
  •  現在、ブラジルの移転価格制度には事業再編に係る移転価格の概念はないが、今回の改正により、機能、資産、移転された潜在的利益を考慮した対価を決定するための独立企業間移転価格の枠組みが含まれることになる。
  • ブラジルは、企業間の金融取引に関するOECD移転価格ガイドラインの第X章を採用する。これには、貸付金、キャッシュプール、保証、保険が含まれ、すべて利息制限法(ILR)または過少資本税制に影響を与えずに行うことができる。
  • 現在、ブラジルは国別報告書(CbC)のみを要求している。ブラジルは、国際的なベストプラクティスに従って、マスターファイルおよびローカルファイルを含む3層構造の移転価格文書化アプローチを採用する予定である。RFBは現在、不十分な文書や非提示の場合に適用される罰則制度を検討中である。
  • ブラジルの新しい枠組みでは、引き続き自発的な移転価格調整に依存するが、arm's lengthでない移転価格の場合には、RFBが第一次調整の権限を有する。RFBは現在、第二次調整の可能性を検討している(例えば、本国送還オプション付きみなし貸付方式など)。
  • RFBは移転価格事前確認(APA)の締結および相互協議(MAP)を締結することが認められると考えられるがそのためには、米国、ドイツ、英国などの経済大国を含めるために、ブラジルの租税条約ネットワーク(比較的薄い条約ネットワークとの見方もある)を更新して拡大することが必要になる。

KPMGの見解

税務専門家は、この変更はブラジルの移転価格制度に大きな飛躍をもたらし、独自の制度からグローバルな移転価格の枠組みに沿った制度へと移行すると考えている。

納税者は、経済的現実と独立企業間原則に沿ったセーフハーバーの包括的な枠組みを期待することができる。この部分の作業はまだ進行中で、二次法として導入される可能性がある。この次のステップは、第一段階のBEPS2.0プロジェクトに基づく金額Bに関する現在の進展に大きく影響される可能性があると予想する人もいる。

要するに、RFBとOECDは現在、移転価格制度の収斂は完了すると考えており、OECDの基準を採用する方向へ進むと見ている。2022年と2023年には、納税者は新しい移転価格の枠組みの採用と運用ステップに向けたアクションを期待することができる。しかし、新体制の実現に関する明確なスケジュールは示されていない。ブラジル政府は、立法案を議会に提出する「適切な時期」の重要性を強調した。2022年はブラジル大統領選の年であり、このような環境では多くのことが起こり得る(あるいは起こらないかもしれない)ことを念頭においてほしい。

なお、上記は一般的な情報の提供を目的に作成しているものであり、正確性を期すためにも必ずポルトガル語の原文をご参照いただきますようお願いいたします。また、何らかの行動を取られる場合は、ここにある情報のみを根拠とせず、必ずプロフェッショナル等の適切なアドバイスをもとにご判断ください。

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