インド:非居住者へのソフトウェア支払いに対する源泉徴収税に関する新たな判決について
非居住者へのソフトウェア支払いに対する源泉徴収税に関して、インド最高裁判所は、納税者に有利な決定を下しました。具体的には、 エンドユーザーおよびディストリビューターへのパッケージ/組込型ソフトウェアの販売は、適用される二国間租税条約の規定における 「ロイヤルティ」 として課税されないとされました。
非居住者へのソフトウェア支払いに対する源泉徴収税に関して、インド最高裁判所は、納税者に有利な決定を下しました。
広く知られている通り、非居住者のソフトウェアの販売およびライセンスに係る支払いへの課税は、インドで広範に訴訟提起されてきた争点でした。インド最高裁判所 (SC) は先の判決で、納税者に有利な決定を下しました。具体的には、 エンドユーザーおよびディストリビューターへのパッケージ/組込型ソフトウェアの販売は、適用される二国間租税条約の規定における 「ロイヤルティ」 として課税されないとされました。
最近、 類似の納税者に有利な判決 (2021年8月17日付け)が、Urban Ladder HomeDécorSolutions Pvt.Ltd.(納税者)の事案で、バンガロール租税裁判所 によって下されました。裁判所は、本件において、インドにおける非居住者法人(例えば、関連する租税条約の下にあるFacebook Ireland、Rocket Science USA、Amazon USA等)に対するオンライン広告、マーケティングおよび情報技術 (IT) 設備に係る支払いに対する課税について取り扱っています。
本件の事実関係
- 非居住者法人 は、納税者に広告コンテンツのための情報システム設備 の利用を許可していた。
- 非居住者法人に対する支払いは、非居住者法人が提供する情報システム設備の使用についてのみなされていた。
- 非居住者法人は、情報システム設備に係る使用または権利に関するいかなる具体的なライセンスも与えていなかった(ソフトウェアを含む)。
結論
裁判所は、重要な判断基準となる (ソフトウェアを含む)設備に付随する「著作権」の付与は発生していないという理由で、非居住者によって提供された単なる設備の使用については、租税条約下の「ロイヤルティ」としての支払いは課せられないとの判決を下しました。従って、そのような非居住者法人になされた支払いは、インドにおいて、関連する租税条約下の「ロイヤルティ」として課税されません。結論として、これらの支払いにおいて、納税者による1961年所得税法第195条における源泉徴収の必要はないということになります。
検討が必要な論点
上記の画期的な最高裁判所とバンガロール租税裁判所の判決は、ソフトウェア課税に関する論争に終止符を打つ一方で、インドの支払者の立場から検討しなければならない重要な論点も提示しています。 例えば、 次のような論点があります。
- 支払者は、機密情報、技術的ノウハウ、商標、ブランド特性等を使用するライセンスを有しているか。
- 現在のビジネスモデルにおけるソフトウェア/エンドユーザー使用許諾契約書 ( 「EULA」 ) の使用条件は、源泉徴収税(WHT) 免除を正当化する同判決と同等といえるか。
- 特定のソフトウェアの使用方法(例:オンラインサブスクリプション、ダウンロード等)も 、同判決およびそれによる源泉徴収税(WHT) 免除の適用対象となるか。
- ソフトウェアの使用、インストール、およびメンテナンスが混合した支払いにおいて、源泉徴収税 (WHT) はどのように取り扱われるべきか 。源泉徴収税(WHT)に係る税務訴訟リスクを限定するために源泉税の軽減税率適用証明書を取得すべきか。税務当局が同証明書を交付する可能性はどの程度あるか。当該取引が、導入および運用保守のために海外からの人員の出張を伴う場合、インドにおける恒久的施設 (PE) リスクを考慮する必要があるか。
- これらの判決の前に、契約額を源泉税控除後金額で合意している場合で源泉徴収税(WHT)納付済みの場合、当該源泉徴収税の還付をこれから請求することができるか。
尚、上記の例示的な論点は、取引ごとに異なることがある点、各取引における含意は各事例に基づいて詳細に分析する必要がある点にご留意ください。
貴社の事案における課税・非課税の判断について、上記判決との比較検証により再評価でき、その結果としてインド非課税の立場を取ることが可能となる場合があります。