人材確保等促進税制(Tax Credits for Promotion of Securing Human Resources)
人材確保等促進税制とは、コロナ禍における雇用情勢の悪化等を踏まえ、ポストコロナを見据えた企業の経営改革の実現に向け、外部人材の獲得や人材育成への投資を促進する観点から、新規雇用者に対する給与を一定割合以上増加させた企業に対して、その新規雇用者に対する給与の一定割合の税額控除を認める制度である。
人材確保等促進税制とは、コロナ禍における雇用情勢の悪化等を踏まえ、ポストコロナを見据えた企業の経営改革の実現に向け、
2021年度税制改正により創設された本制度は、2021年4月1日から2022年3月31日までの間に開始する各事業年度において、一定の要件を満たした青色申告法人に適用がある。
(2022年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度における賃上げ税制については、賃上げ促進税制を参照)
制度の概要
1. 適用期間
2021年4月1日から2022年3月31日までの間に開始する各事業年度
(設立事業年度、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。)
2. 要件
(a) | 新規雇用者給与等支給額 ≧ 新規雇用者比較給与等支給額×102% |
(b) | その事業年度の教育訓練費の額 ≧ 比較教育訓練費の額×120% |
3. 税額控除限度額(法人税額の20%が上限)
要件(a)のみを満たす場合 | 控除対象新規雇用者給与等支給額×15% |
全ての要件を満たす場合 | 控除対象新規雇用者給与等支給額×20% |
用語の意義
新規雇用者給与等支給額 | 国内新規雇用者(雇用保険法の一般被保険者に限る。)に対する給与等の支給額で、法人の各事業年度(適用年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの(他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除く。)がある場合には、その金額を控除した金額) |
新規雇用者比較給与等支給額 | 国内新規雇用者(雇用保険法の一般被保険者に限る。)に対する給与等の支給額で、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの(他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除く。)がある場合には、その金額を控除した金額) |
国内新規雇用者 | 法人の国内雇用者のうち、その法人の国内の事業所に勤務することになった日(労働基準法に規定する労働者名簿に氏名が記載された日)から1年を経過していない者(支配関係がある法人から異動した者及び海外事業所から異動した者を除く。) |
国内雇用者 | 法人の使用人(役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く。)のうち、その法人の国内の事業所に勤務する雇用者として、労働基準法に規定する賃金台帳に記載された者 |
雇用安定助成金額 | 国又は地方公共団体から受ける雇用保険法に基づく助成金その他これに類するものの額 |
教育訓練費 | 法人がその国内雇用者の勤務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用 |
その事業年度の教育訓練費の額 | その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額(他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額) |
比較教育訓練費の額 | 適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額(他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)の合計額を、その各事業年度の数で除して計算した金額 |
控除対象新規雇用者給与等支給額 | 法人の各事業年度(適用年度)の国内新規雇用者(雇用保険法の一般被保険者に限られない。)に対する給与等の支給額(他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を含む。)がある場合には、その金額を控除した金額)のうち、調整雇用者給与等支給増加額に達するまでの金額 |
調整雇用者給与等支給増加額 | (a)-(b) (a)雇用者給与等支給額 (b)比較雇用者給与等支給額 |
雇用者給与等支給額 | 国内雇用者に対する給与等の支給額で、法人の各事業年度(適用年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの(他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を含む。)がある場合には、その金額を控除した金額) |
比較雇用者給与等支給額 | 国内雇用者に対する給与等の支給額で、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの(他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を含む。)がある場合には、その金額を控除した金額) |
参考
外形標準課税の対象法人が、2021年4月1日から2022年3月31日までの間に開始する各事業年度(解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。)において以下の要件を満たす場合には、以下の控除額を、付加価値割の課税標準である付加価値額から控除することができる。
要件
新規雇用者給与等支給額 ≧ 新規雇用者比較給与等支給額×102% |
控除額
控除対象新規雇用者給与等支給額×(報酬給与額-雇用安定控除額)/報酬給与額 |
- 「雇用安定控除額」とは、雇用安定控除(報酬給与額が収益配分額の70%を超える場合に、付加価値額からその超える部分の金額を控除することができる制度)における控除額をいう。
「収益配分額」とは、付加価値額のうち、報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額をいう。