タイ:PDPA施行の再延期及び2020年度の法人税申告の留意点

コロナウィルスの感染拡大を受けて、個人情報保護法(PDPA)の施行を再延期することを閣議が承認しました。また、 今月は12月決算法人の法人税申告書(PND.50)の提出期限となるため、2020年度の法人税申告の留意点を お伝えいたします。

PDPA施行の再延期及び2020年度の法人税申告の留意点について解説いたします。

1.PDPA施行の再延期

今月5日の閣議にて、コロナウィルスの感染拡大による事業者の負担軽減を考慮し、本年6月1日から施行される予定であったPDPAの施行を1年間延期する(2022年6月1日から施行する)ことが承認されました。

2.法人税申告期限の延長

コロナウィルス感染拡大を受けて、4月30日付でタイ財務省から一定の要件を満たす会社の法人税申告書の提出期限及び納税期限の延長を認める通知が出されました。申告・納税期限の延長の対象となるのは、電子申告による場合のみとなります。

 

a)非上場会社

対象会社 12月決算法人で2020年度のe-filing(電子申告)による当初の法人税の申告書提出期限が2021年5月末、納税期限が2021年6月末である非上場会社
対象文書 法人税申告書(PND.50またはPND.55)及び関連者取引の明細(Transfer Pricing Disclosure form)
延長後の申告・納税期限 2021年6月30日

 

b)タイ証券取引所に上場している公開会社(“上場会社”)

対象会社

以下の条件を満たす上場会社

  1. 12月決算法人で2020年度のe-filing(電子申告)による当初の法人税の申告書提出期限が2021年5月末、納税期限が2021年6月末である上場会社
  2. 財務諸表を承認する定時株主総会を2021年4月26日から30日までの間に開催することを予定していた会社で、コロナウィルス感染拡大を受けた特別措置(下記3.参照)に基づき、定時株主総会の開催日を延長した上場会社

対象文書 法人税申告書(PND.50)及び関連者取引の明細(Transfer Pricing Disclosure form)
延長後の申告・納税期限 2021年6月30日
その他の要件 タイ歳入局のウェブサイトを通じて、変更前及び変更後の定時株主総会開催日を2021年5月31日までにタイ歳入局長官宛てに通知する必要がある。

 

3.定時株主総会の延期

コロナウィルス感染拡大を受けて、4月26日付でタイ商務省から以下の3つの要件を満たす12月決算法人の定時株主総会の開催期限(決算日から4ヶ月以内)とオンラインによる監査済み財務諸表の提出期限(定時株主総会開催日から1ヶ月以内)を最大で1ヶ月間延期を認める通知が出されました。

  1. バンコク、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットサコーン、サムットプラカーン、チョンブリ、ラヨーン、コンケーン、チェンマイ、ナコンパトム、ナコンラチャシマ、ウドーンターニー、プラチュワップキーリーカン、プーケット、ターク、ソンクラ―、サケ―オ、スパンブリーの18都・県のいずれかに所在する法人であること
  2. 定時株主総会を2021年4月26日から30日までの間に開催することを決定し、株主に対して招集通知を発送済みであること
  3. 上記の18都・県における一定期間の閉鎖要求により、定時株主総会の延期を余儀なくされたこと

 

4.貸倒損失の損金算入要件の緩和

本年1月19日に、法人税の計算上の貸倒損失の損金算入要件を定めたMinisterial Regulation No.186の改正案が閣議で承認されましたが、4月29日付でMinisterial Regulation No.186の改正版が官報に掲載されました。

この改正は2020年1月1日以降に開始する事業年度(2020年度)から適用されます。主な改正内容として、損金算入の対象となる債権額が以下のとおり引き上げられます(要件が緩和されます)。

債権金額
損金算入要件
改正前 改正後
10万バーツ以下
(一定の金融機関は20万バーツ以下)
 
20万バーツ以下
  • 適宜督促等の諸策を実施したことが証明できること、かつ
  •  回収見込額以上の訴訟費用が見込まれることを立証できること
     
50万バーツ以下 200万バーツ以下

以下(1)~(4)のいずれかの要件を満たすこと

  1. 債務者が個人の場合、債務者が死亡または失踪し、本人に債務を弁済できる在債がない事実を証明できること
  2. 債務者が法人の場合、債務者が事業を廃止しており、債務弁済順位が上の他の債権者が有する債権額の合計がその債務者の財産を上回る事実を証明できること
  3. 債権者により民事訴訟がなされ、裁判所に受理されたこと
  4. 債権者により破産申し立てがなされ、裁判所に受理されたこと

※上記(3)又は(4)の場合、債権者である法人の取締役がその会計年度の末日から30日以内にその債権の貸倒処理を承認すること

 

50万バーツ超 200万バーツ超

以下(1)~(4)のいずれかの要件を満たすこと

  1. 債務者が個人の場合、債務者が死亡または失踪し、本人に債務を弁済できる在債がない事実を証明できること
  2. 債務者が法人の場合、債務者が事業を廃止しており、債務弁済順位が上の他の債権者が有する債権額の合計がその債務者の財産を上回る事実を証明できること
  3. 債権者により民事訴訟がなされ、裁判所が債務履行命令を下したものの、債務者に債務弁済能力がないこと
  4. 債権者により破産申し立てがなされ、裁判所の承認に基づき、債務者から最初の財産分配がなされたこと

 

5.関連者取引の明細書の提出方法の変更

2019年1月1日以降に開始する事業年度(2019年度)から、その事業年度の売上が2億バーツ以上の法人は、法人税申告書(PND.50)に関連者取引の明細書(”Transfer Pricing Disclosure Form”)を添付することが義務付けられていますが、2020年1月1日以降に開始する事業年度(2020年度)より、関連者取引の明細書をタイ歳入局のウェブサイト(www.rd.go.th)、もしくはタイ財務省のウェブサイト(https://etax.mof.go.th)にてオンラインで提出することが求められます。

なお、関連者取引の明細書をオンラインで提出できない場合には、タイ歳入局のウェブサイトより書式をダウンロードし、その書式に情報を記入のうえ、所轄の歳入局にハードコピーで提出することも認められますが、その場合には、オンラインで提出できない理由を記載した文書をタイ歳入局長官宛てに提出する必要があります。
 

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