グループ通算制度(Japanese Group Relief System)
グループ通算制度は、完全支配関係のある企業グループ内で損益通算及び欠損金の通算を可能としながら、その企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が法人税額の計算及び申告を行う仕組をいう。
グループ通算制度は、完全支配関係のある企業グループ内で損益通算及び欠損金の通算を可能としながら、その企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が法人税額の計算及び申告を行う仕組
「連結納税制度」は、企業の組織再編成を促進し、日本企業の国際競争力の維持強化と経済の構造改革に資することになるとの観点から、2002年度に導入された制度で、企業グループ全体を一つの納税単位として課税する仕組みであり、導入以来有効に活用されてきたが、税額計算の煩雑さや税務調査後の修正・更正等に時間がかかり過ぎるといった指摘もあり、損益通算のメリットがあるにもかかわらず連結納税制度を選択していない企業グループも多く存在していた。
このため、事務負担の軽減を図るための簡素化及びグループ経営の多様化に対応した中立性・公平性の確保の観点から、2020年度税制改正で連結納税制度が抜本的に見直され、グループ通算制度へ移行することとされた。
グループ通算制度のポイント
1. 個別申告方式
- 通算グループ(内国法人である親法人と、その親法人による完全支配関係のある全ての子法人(外国法人等を除く。))内の各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行う。
- 試験研究費の税額控除制度や外国税額控除制度においては、通算グループ全体で税額控除額を計算するなど、通算グループ全体で計算・調整する個別制度も設けられている。
- グループ通算制度の適用法人(通算法人)に修正・更正が行われる場合には、原則として通算グループ内の他の通算法人の所得・税額計算に反映させない(遮断する)ための措置が講じられている。
2. 損益通算・欠損金の通算(繰越し)
- 通算グループ内の欠損法人の欠損金額を所得法人の所得金額と損益通算することができる。
- 特定欠損金は自己の所得の範囲内でのみ控除し、通算グループ全体の非特定欠損金の合計額は損金算入限度額(特定欠損金を控除した残額)の比で各通算法人に配分し、配分後の欠損金を控除する。
3. 組織再編税制との整合性
- グループ通算制度の適用開始時・通算グループへの加入時における時価評価課税及び欠損金の持込み等の取扱いは、組織再編税制と整合性のとれた制度とされている。
(連結納税制度より時価評価課税や欠損金の切捨ての対象が縮小することが見込まれる一方で、連結納税制度のもとでは時価評価課税は不要とされ、連結納税開始前の欠損金の持込み等について何ら制限を受けなかった親法人にも、時価評価課税、欠損金の切捨て又は欠損金や資産の含み損等の利用制限が生じる場合がある。)
4. 親法人の適用開始前の繰越欠損金の取扱い
- 親法人のグループ通算制度の適用開始前の繰越欠損金は、子法人と同様、特定欠損金として自己の所得の範囲内でのみ控除する。
(連結納税制度においては、親法人の連結納税開始前の繰越欠損金は、その開始後においては連結欠損金として連結納税グループ内で控除可能とされていた。)
5. 中小法人の判定
- 通算グループ内のいずれかの法人が中小法人に該当しない場合には、その通算グループ内の全ての法人が中小法人に該当しないこととされ、中小法人に係る特例は適用されない。
6. 地方税
- 連結納税制度における基本的な枠組みが維持されている。
適用時期及び経過措置
- グループ通算制度は、2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されている。
- 2022年3月31日に連結納税制度を選択していた連結納税グループは、2022年4月1日においてグループ通算制度の承認を受けたものとみなされ、グループ通算制度へ自動的に移行する。ただし、2022年4月1日以後最初に開始する事業年度開始日の前日までに、連結親法人が所轄税務署長に届出書を提出した場合には、グループ通算制度の適用を受けない法人となることができる。
- グループ通算制度の施行前から連結納税制度を適用していた連結法人がグループ通算制度に移行する場合には、連結納税制度における特定連結欠損金個別帰属額はグループ通算制度における特定欠損金とみなされ、その法人の個別所得を限度として控除することができる。(連結欠損金(連結親法人の連結納税開始前の欠損金を含む。)は、グループ通算制度において非特定欠損金として通算グループ内で控除可能)