2020年の主要な規制上の10の課題

新型コロナウイルス感染症による混乱を踏まえて、金融サービス各領域における影響とリスクのレベルを再検討しました。

新型コロナウイルス感染症による混乱を踏まえて、金融サービス各領域における影響とリスクのレベルを再検討しました。

2020年中間期の展望:金融サービスのリスクは増大する見込み

2020年の主要な規制上の10の課題を検討するにあたり、非常に短期間で状況が大きく変化したことは明らかです。KPMGでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による混乱を踏まえて見通しの修正を行い、その結果、規制課題の各領域は修正前と変更ありませんが、今一度検討し直し、各領域における影響とリスクのレベルを変更しました。

金融サービスのリスク度

01 地政学的変化

  • 金融サービス事業者は、経済・金融の安定と最大限の回復を支援するという点で最も重要な役割を果たします
  • 公共政策に対して、企業、従業員、影響が及ぶ業界、市場全体の流動性を保護するよう継続的な圧力がかかります
  • 保護主義的傾向が続くことによってサプライチェーン/サービスプロバイダーが混乱し、制裁措置/関税の拡大とレピュテーション・リスク上昇の可能性が高まります
  • 不確実性が高まります。特に継続的に人員整理が行われ、サイバーセキュリティおよび金融犯罪のリスクが高まります
  • さまざまな圧力により、常に変化する監督機関および規制当局の注力対象が、公正なアクセスと処理、最善の利益の原則、データプライバシーの保護などの領域にシフトします

02 規制のばらつき

  • 新法(CARES法および補足条項)と連邦政府および州によるルールの策定---多くは一時的なもので、中には互いに矛盾する可能性のあるものもあります(猶予、差し押さえ要件、データプライバシーなど)---の結果、規制の変更が大幅に行われます
  • 対象グループ(従業員、中小企業、大企業、州/地方自治体、特定の業界)の流動性を重視する新たなプログラム/商品が複数誕生します。中小企業向けPPP(給与保護プログラム)およびMSLP(メインストリート融資制度)、FRBによる州/地方自治体向け信用供与、航空業界や医療業界を対象としたもの、などです
  • 特定業界に固有のニーズにフォーカスした公共政策を実施する可能性があります。例えば、飲食店、経営者が女性やマイノリティである企業、CDFI(アメリカ・コミュニティ開発金融機関)、利益(事業中断)保険などですが、官民が提携して行う場合もあります
  • 新しいルールおよび関連事項により、住宅ローンおよび消費者金融、民間融資、保険業界の救済を目指します
  • CRA(地域再投資法)に基づいて行われる各々のルールの策定により金融機関全体に不確定要素が広がります

03 データ保護とガバナンス

  • リモートワークは、情報バリア、監督機能の限界、コミュニケーションの問題、サイバー攻撃の脅威、利益相反、潜在的な不法行為に関するリスクを増幅させます
  • リモートアクセスへの依存は、複数のチャネルやシステムを網羅するデジタルアクセスの需要を高め、技術要件が増え、第三者による監督の必要性が高まります
  • 新商品と新システムが急速に開発されることで、データのクオリティ、セキュリティ、プライバシー、コントロールに関するリスクが高まります
  • 経済刺激策に関連して、報告要件、データの正当性、文書化を重視する傾向が強まり、金融だけでなく金融以外の規制関連の報告にも影響が及びます

04 オペレーショナル・レジリエンス

  • ネットワークへのアクセスとコントロール、テクノロジー、デジタル機能の再構築を必要とする、デジタルサービス提供へのシフト、それに伴うオペレーション上の変化、有効なコントロールおよびテストの実施の重点的取組みへの必要性が加速します
  • 金融サービス事業者は事業の継続性とパンデミックへの対応計画を示さなければなりません。計画には、設備、人員体制、システム、不可欠なオペレーション、「職場への復帰」に関する包括的な枠組みを含みます
  • 顧客保護、データプライバシー、事業の継続性を維持するために、第三者による管理が強化されます
  • 当局検査官は、不況時のレジリエンスの強さ、顧客保護、レピュテーション・リスクを重視します
  • たとえばコロナウイルスに対する「感度分析」や高まる気候変動による金融リスクを、ストレステストに取り入れます

05 クレジット・クオリティ

  • ローンの回収、与信集中による影響、継続的な資本の影響分析などの領域で、新たなデータ測定方法、追跡プロセス、報告が必要となります
  • 差し押さえと立ち退きの猶予が引き続き延長されます(ファニーメイ、フレディマック、FHA)
  • 猶予期間(2021年まで延長される可能性があります)の終了後に、回収の取り組みが行われ信用損失が拡大することが見込まれます
  • 今年から導入されたCECL(現在予想信用損失)は、基本モデルを重視しつつ、定性的調整を行い、また継続的に測定方法を修正する必要があります
  • LIBORの廃止が予定されており、既存の貸出、システム変更、新商品に対応するために規制圧力が高まっています

06 資本と流動性資金のシフト

  • 連邦政府による保証に加え、信用供与枠が拡大します
  • 正味の受取利息および手数料は減少する見込みで、規制当局は資本計画と配当支払いを注視しています
  • 経済状況が変化または明らかとなるのに先立ち、資本/流動性資金の質の向上に着手する必要があります
  • CCAR(包括的資本分析およびレビュー)によって企業がどのように現在の環境下で資本を管理し緊急対応計画を実施しているのかが監視され、資本計画の修正が提案される可能性があります

07 コンプライアンス・アジリティ

  • 規制当局は、経済的要因(猶予、損失軽減、回収、手数料免除、政策的「回収」など)に対応する領域のコンプライアンスや、QC(品質管理)の妥当性およびコンプライアンスコントロールの対象範囲を注視します
  • 景気循環により、潜在的な不正、不法行為、販売慣行/販売刺激策、UDAAP(不公正、詐欺的または乱用的な行為、または慣習)に関連するレピュテーション・リスクおよびコンプライアンス・リスクが高まっています
  • 新規および既存貸出に関するCOVID-19関連の統計値(猶予、滞納、償却、条件変更、事業再編など)によって、新規書類の作成や追跡要件が追加されることになります
  • 規制上の審査において、ローンの承認、否認、回収、政府プログラムのための適格性や優先順位付けなどの根拠を示す書類作成時の顧客保護が考慮対象となります
  • デジタルプラットフォーム構築とテクノロジーシステムの統合・合理化が加速されます。そのための手法はアジリティが高く、コンプライアンスの有効性および持続可能性が確保されている必要があります

08 金融犯罪

  • リモートアクセスおよび複数チャネルの使用により、KYC(顧客管理)やCDD(顧客デューデリジェンス)の要件を満たすことが難しくなるなど、不正およびサイバー犯罪のリスクが増大し、支払いおよび口座利用のためのデジタルプラットフォームおよびバーチャル設備の利用/悪用が拡大しています
  • 新商品、新規プログラムの早急な導入により不確実性と潜在的なコントロールリスク(身元詐称、横領、マネー・ローンダリング、テロ資金供与などの可能性)が生じます
  • 違法な活動には、投資スキーム、義援金詐欺、フィッシング詐欺、汚職が含まれる場合もあります
  • 未曾有の時代には、銀行秘密法、リスク増大対策としての金融犯罪対応プロセスおよびテクノロジーのレジリエンスを重視することが不可欠で、新たな脅威に対処するべくプログラムを修正します

09 顧客信頼度

  • 新たな信用プログラムの分野(SBA<米国中小企業庁>のPPP<給与保護プログラム>など)では、デジタル取引(支払いなど)、顧客とのやり取り(コールセンター、苦情対応、デジタルプラットフォーム)、社内、ベンダー、顧客基盤のESGパフォーマンス測定の件数が増加するなど、レピュテーション・リスクが上昇しています
  • 「最善の利益規則」の遵守に関する利益相反、適合性、情報開示に対する意識が高まっています
  • 人口統計学的に分類されたどのグループでも急速に受け入れられるなど、モバイルバンキングやオンラインバンキングへのシフト進んでおり、顧客からの信頼度に影響(カスタマーエクスペリエンスによってプラスまたはマイナスの影響)を及ぼす可能性があります
  • 借家人、住宅所有者、小規模事業者の救済、データプライバシー、資金調達手段、信用報告、手数料免除などの顧客ニーズが存在しています

10 倫理・コンダクト

  • 監視/監督システムは、リモートワーク、デジタルプラットフォーム、新たなテクノロジーの速やかな導入に対して、逼迫しているかまたは再構築が必要な場合があります
  • 新商品・新規プログラム、配送システム、困窮した顧客の存在が、不正者による潜在的な不正行為のリスクを高めます
  • 不況下においては、第三者を通じて行われるなどする顧客保護関連の規制上の審査は、ECOA(信用機会平等法)/公正な貸出などの顧客待遇、UDAAP(不公正、詐欺的または乱用的な行為、または慣習)、販売慣行、投資家取引、ADA(障害を持つアメリカ人法)に関して、重点が置かれます
  • 経済/金融環境が厳しく高リスクであることが、苦情・調査プロセスの重要性を押し上げています
  • ESGパフォーマンス、特に「社会」要因に対する認識が高まっており、金融サービス/オペレーションだけでなく従業員や顧客の健康と安全を満たす努力も評価されるようになります

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