ロボットが活躍する未来の接客業とは

「小売りの明日」第16回 - 接客業で期待されるロボットの活用について、すでに実現されている事例を交えつつ、未来の接客業のあり方について考察する。

接客業で期待されるロボットの活用について、すでに実現されている事例を交えつつ、未来の接客業のあり方について考察する。

ロボットが接客をする。この言葉を聞いて「そんなことは普及しない」という意見と「すでに普及し始めている」という意見、様々あるだろうが、想像してみてほしい。広大なショッピングセンターで、皆さん1人ひとりに接客は付かないはずだ。困りごとがあれば総合受付で相談をするか、施設のレイアウト地図でテナントの位置を確認する。これが現状だ。
ロボットの接客を活用すれば、これらの手間は大きく改善される。入店時はもちろん、店舗に近づいたタイミングからデジタルによる接客が開始され、位置情報に応じてあなたのスマートフォン(スマホ)にレコメンド情報が入り、入店した瞬間に接客アプリが起動、案内が開始される。スマホを持たない人は、店内のロボットに直接聞けば案内をしてくれるのだ。

このような取組みは未来の話ではなく、すでに実現されている。日本ユニシスが展開する自立移動型サービスロボットの「Navii(ナビー)」や多機能ロボット「Siriusbot(シリウスボット)」がそれだ。「この商業施設に家電売り場はありますか?」と問いかければロボットが答えて、売り場まで案内してくれる。多言語にも対応可能なのでインバウンド(訪日外国人)対策には最適だろう。ロボットは何千、何万という商品をデータ管理し、店舗の在庫や売価、商品情報を顧客に伝えるだけではなく、従業員の業務改善にも寄与する。営業時間中は接客、営業時間外は棚卸しロボットとなり、人が何時間もかけていた棚卸し作業をロボットが数十分で完了させる。

中国の天津市に「京東X未来レストラン」というロボットレストランがある。料理の注文から配膳まですべてをロボットが行っているから驚きだ。そこには省力化と料理の標準化という視点があるが、ロボットが運んでくることで子供たちが驚いて笑顔になることも見逃せない価値である。
それとは対照的に接客はすべて人が行う「海底撈(ハイディーラオ)」という火鍋チェーン店が北京市にある。この店舗ではロボットが料理を席の近くまで運ぶが、来店客へのサーブは必ず人が行い、おもてなしをする。料理を取りに行く、運ぶという時間を削減し、人的サービスの価値を向上させ、ロボットと人の相乗効果を出している。

今後は仮想現実(VR)も活用して、店舗に来店せずとも家にいながら店を回遊している体験を提供し、あたかも売り場にいるかのように接客を受け、購入するという取組みが増えていくだろう。実際の店舗の人的接客とロボット接客、デジタル上での接客、これらが融合していくと、24時間接客可能という状態もおおげさではなく実現する。人とロボットがどう連携していくか、未来のあるべき接客の姿を各社が現実のものとして考えるべきタイミングをまさに迎えているのだ。

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日経MJ 2019年5月13日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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