インフルエンサーマーケティングは成果を生む決め手となるか

「小売りの明日」第18回 - SNSの普及に伴い小売業界でも注目されているインフルエンサーマーケティングについて、活用事例を交えて、その有効性について解説する。

SNSの普及に伴い小売業界でも注目されているインフルエンサーマーケティングについて、活用事例を交えて、その有効性について解説する。

米国でのある調査によると、31%の小売業者がSNS(交流サイト)などで、インフルエンサーを利用したマーケティングをした経験があると回答している。この調査でインフルエンサーマーケティングを行った経験が一度もなく、今後もその計画はないとの回答は33%にとどまった。日本でもインフルエンサーマーケティングは数年前から注目されているが、いまだ取り組めていない企業は多い。
そんな中、イオンはSNSを効果的に使い分けて情報発信をしている。同社のLINE公式アカウントユーザーは369万人に上るほか、フェイスブックで46万人、インスタグラムに3.9万人、ツイッターに62万人のフォロワーを獲得している。それぞれの特性を生かし「情報発信」「口コミの拡散」「ブランディング」など使い分けを効果的に行っている。SNSだけにとどまらず、テレビCMや新聞折り込みチラシとの相乗効果、目的に応じたクリエイティブのバリエーションも考慮しているだろう。

SNSの普及に伴い、インフルエンサーの重要性はますます高まっている。特にインターネットが普及した環境の中で育ったミレニアル世代や、さらにその下のZ世代に対するアプローチにインフルエンサーの活用は避けては通れない。インフルエンサーにもフォロワー数が100万人を超える有名人から5万人以下のマイクロインフルエンサー、1万人以下のナノインフルエンサーなど、様々な階層があり、信頼の醸成や購買喚起、認知促進などそれぞれの特性を生かした役割を担う。
化粧品や健康食品を手がけるファンケルがシンガポールで、有名ブロガーに対して自社製品の感想をフェイスブックに投稿したところ、7700万件の「いいね!」がついたという。国内ではある女性歌手が110人のインフルエンサーを集めたインスタグラムでのライブ配信は160万人を超えるフォロワーに配信された。スタジアムでのコンサートで160万人が来場するのは不可能だが、インフルエンサーを通してファンとの一体感を共有できたと言えるだろう。

プロモーションとしてのインフルエンサー活用のみならず、インフルエンサーの声には商品開発につながるヒントも多く潜んでいる。店舗への来店理由は多岐にわたるが「あの商品・サービスがある、あのお店に行きたい」という目的を持って来店する人をどれだけ増やせるかという課題に、インフルエンサーマーケティングは有効だろう。
しかし、単に情報を流せば成功するというほど簡単ではない。ターゲット、商品、メディア特性、数値目標などを綿密に設計しなければ大きな効果は得にくい。飽和状態にある店舗で、生き残るためには来店の優先度を高めていかなくてはならない。インフルエンサーマーケティングは大きな成果を生む有効打だろう。


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日経MJ 2019年6月9日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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