離脱案合意についても準備していますか?

The Brexit Column - 企業は、そろそろ「合意なき離脱」後の1日目に向けた計画を立案している頃でしょう。しかし、離脱協定案合意後の1日目の準備はしているのでしょうか。今後起こり得る、マイナス面およびプラス面両方の事態に備えるべきであると、Mark Essexは分析しています。

企業は、そろそろ「合意なき離脱」後の1日目に向けた計画を立案している頃でしょう。しかし、離脱協定案合意後の1日目の準備はしているのでしょうか。

企業は「合意なき離脱」後の1日目に向けて、(議論の余地が有る無しにかかわらず)多少なりとも準備をしていると思います。しかし、離脱案が合意された場合の1日目に向けての準備はできていますか、と質問した人はいるでしょうか。メイ首相の離脱案に賛成してもしなくても、来週(3月12日)、離脱案が英議会下院で可決され、議会による意味ある投票となれば、英国中の企業は大きな安堵のため息をつき、そして離脱案可決のニュースを合図に、臨戦態勢を解き、緊急対策チームを家に帰すことでしょう。移行期間である最低21ヵ月間の安定期間が、離脱案合意後の対応策立案を先延ばしにする誘惑の元です。

私は、離脱案合意後に不用意に慌てて動かないよう準備しておくことを顧客に言い続けています。離脱案合意のニュース後に詳細な危機管理計画に着手する企業は、別の形で窮地に追い込まれ、離脱案合意の利点を得るチャンスを逃し、これまでとは違う形で不安定な状態となる可能性があります。
バーコウ議長がメイ首相の勝利を宣言した直後のロンドン証券取引所の立会取引の状況を想像してみてください。恐らく、主要通貨に対しポンドが急騰し、立会場のスクリーンはグリーンに光っています(国民投票前の高値にまでは届かないかもしれませんが、それはおそらく力強い回復となるでしょう)。

企業は、この事態を切り抜けるために、(物価の下落を受け)ヘッジ戦略、輸出価格戦略、輸入品の発注について、どのような早急な決断が必要なのでしょうか。また、その状況からどのように、利益を得ることができるでしょうか。

離脱案合意後、企業の営業チームは、これまでの累積需要がついに動き始めると予想しています。消費意欲は回復し、プロジェクトを保留にしていた顧客が突然、再び動き始めます。「合意なき離脱」の脅威に対して、在庫を積み増していたのであれば、それは素晴らしいことです。しかし、提供しているモノがサービスであったら、また資金や人手が不足している状況であったとしたら、どうなるでしょうか。企業は、誰を、どのように優先させるのでしょうか。追加の仕掛品に資金を回す必要はあるのでしょうか。

企業は自社の投資計画を再始動させる時かもしれません。EU離脱交渉の長期化に伴った小康期間に価格を決定していたのであれば、すぐに貴社の取引銀行と再度話し合いを始めたり、海外投資家の再獲得に乗り出したりする必要があるでしょう。
また、離脱案への合意は、企業が対策を講じる必要がある膨大な変化をもたらすことも忘れてはいけません。第三国とのEU貿易協定が、移行期間中においても単純に継続されるかどうか、私たちにもまだわかりません。企業は移行措置が自社の日常のオペレーションにどのような影響をもたらすのか、十分に把握しておく必要があります。入国管理などの分野の移行措置後の状況については、既に十分概説されており、KPMGのイミグレーション分野担当のリーダーであるPunam Birlyがこちらのサイトで解説している通り、雇用主が理解しなければならない新ルールが膨大に存在しています。

結果は、明白か?

前述した内容は例に過ぎませんが、これから1週間後には事態が早急に動き出す予感がしています。私は、予防手段を維持し続け、24日後の「合意なき離脱」に向けた計画の立案を続けることを顧客に全力で要求しています。ここでのポイントは、第一に事態は急速に動く可能性があること、第二に離脱案合意は、過去3年間で企業が対応しようとしてきた不確実性と比較しても、大きな変化を引き起こす可能性があるということです。

もちろん、私たちが期待している合意は、離脱段階のみです。これによって、企業は最も危険で直近の障害物を取り除くことができますが、英国およびEUが今後取り組んでいく協定全体については、あまり明確にならないでしょう。そして、離脱合意がまさに終わりの始まりであることによって、事業活動の活性化や投資、通貨の高騰は、ある程度の期間というよりも短期的な急上昇に限定されると想定されます。

どちらの結果にしても、特に、合意のプラス効果が短期間であるとしても、私からのアドバイスは「合意なき離脱」と同様に、離脱案合意についても素早く対応することです。
具体的に言えば、企業の経営幹部の全員が同じタイミングで休暇を取らないこと、取引銀行とのミーティングをキャンセルしないこと、サプライヤーや顧客との議論を続けること、サプライチェーン・レビューのレビューを実施すること、ポンドが例えば10%下落あるいは10%上昇した場合の会社への影響について検討することです。

つまり、起こりうるあらゆる事態について、その良い面と悪い面の両方を考慮して準備をすることが肝要です。

本稿は2019年3月4日に掲載された英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

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