IFRS第17号「保険契約」の改訂に関する提案の微調整と最終化(IASB April 2019 meeting)

IASB Board Meeting Flash - IASBは4月の会議で、IFRS第17号「保険契約」の改訂に関する提案の微調整と最終化を提案しました。

IASBは4月の会議で、IFRS第17号「保険契約」の改訂に関する提案の微調整と最終化を提案しました。

IASBは、IFRS第17号適用上の課題に関する議論を終了し、2019年6月末に公開草案が公表される見込みである。

変更後のIFRS第17号「保険契約」が保険会社にとってより明確なものとなったことで、市場関係者の懸念や適用上の課題に対処するための基準の改訂に関する議論は、今回のIASB会議をもって終了した。
4月の会議では、IASBは以下を提案することについて確認した。

  • IFRS第17号の発効日を延期し、2022年1月1日からとすること
  • 一定の条件を満たす保険会社等に認められている、IFRS第9号「金融商品」の適用を一時的に免除するオプションについても、2022年1月1日まで延期すること

IASBはまた、IFRS第17号に関して提案されたすべての改訂案を総括的に見直し、追加の年次改善とその他の論点について議論した。
IFRS第17号を改訂するための公開草案は2019年6月末に公表される見込みである。

1. これまでに提案された改訂案の総括的な見直し

IASBは、2018年11月以降に暫定決定された改訂内容を集約して見直し、それらが2018年10月に暫定決定された改訂のための要件を満たすことについて確認した。
IASBは、公開草案を作成するために適用可能なデュープロセスの手順が遵守されていることについて納得し、スタッフには公開草案の投票プロセスを開始することが認められた。
提案されたIFRS第17号の新たな発効日と整合するよう、IASBは、これまでに提案された改訂内容も2022年1月1日から適用されると暫定決定した。

2. 追加の年次改善とその他の論点

提案された追加の年次改善案
IASBは、以下の追加的な論点を明確化する目的で、IFRSの年次改善サイクルにおいてIFRS第17号の文言等を改訂する暫定決定を行った。


保険契約に含まれる投資要素
投資要素は、全ての状況(all circumstances)において保険契約者に返還しなければならない金額をいう。(詳細は2019年4月のTRGの議論を参照)
区分可能な投資要素について、裁量権のある有配当投資契約の定義を満たすのであれば、IFRS第17号が適用され、保険契約から分離されない。


契約上のサービス・マージン(以下、CSM)
IFRS第17号の一般的な測定モデルによれば、CSMは、以下に影響を及ぼす貨幣の時間価値や金融リスクに関連する変動によっては調整されない。

  • 投資要素、または
  • 非金融リスクに係るリスク調整の変動のうち、金融リスクに係る変動要素と非金融リスクに係る変動要素を分離した場合における、貨幣の時間価値または金融リスクの影響により生じた変動部分(詳細は2019年4月のTRGの議論を参照)

これらの変動は、保険金融収益・費用に影響を及ぼすためである。


保険キャッシュ・フローの測定
保険契約の測定において、基礎となる項目の変動の結果として生じるすべての変動は金融リスクの仮定に関連する変動である。(詳細は2019年4月のTRGの議論を参照)


直接連動有配当契約の会計処理
保険会社は、要件を満たさなくなった場合に限りリスク軽減オプションの使用を中止することができる。


その他の論点
IASBは、以下のトピックについて議論したが、これらについて改訂の提案は行わない旨暫定決定した。

  • 一般的な測定モデルまたは変動手数料アプローチにおいて、保険会社が保険金融収益・費用を純損益とその他の包括利益とに分解する場合における、潜在的な会計上のミスマッチ
  • キャッシュ・フローが純額決済される場合における、保険契約の調整表上の開示 (例:一部の再保険契約およびブローカーまたはエージェントとの取決め)
  • IFRS第17号とIFRS第9号が同時に適用される場合における比較情報の修正再表示

3. 次のステップ

IASBの通常のデュープロセスでは、公開草案の公表後に意見募集期間を設ける必要がある。意見募集の期間は通常120日であるが、より短くもなり得る。2019年5月のIASB会議では、IASBは意見募集期間を示すとともに、その他の論点について議論する予定である。
IASBは、2019年6月末に公開草案を公表する予定としている。

“IASBの議論は、IFRS第17号の改訂案の背景にある考え方について、より多くの所見を市場関係者に提供するものである。保険会社は、ビジネスへの影響について対処を開始し、財務諸表の作成者および利用者は、公表される予定の公開草案に対して抱く可能性のある懸念について意見するための準備をする必要がある。”
Joachim Kolschbach,
KPMG’s Global IFRS Insurance Leader

さらに詳しくは
新しい保険契約基準に関するKPMGの所見はIFRS最終基準書の初見分析 - IFRS第17号「保険契約」を参照のこと。また、保険者のIFRS第17号およびIFRS第9号の適用に関する進捗状況について、KPMGの所見はウェブページ「In it to win it」を参照されたい。

執筆者

IFRSアドバイザリー室
ファイナンシャルサービス本部

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