ブロックチェーンで貿易業務を大幅に効率化

「ブロックチェーン活用術」第12回 - 国際貿易における新たなプラットフォームになり得るブロックチェーンの可能性について解説する。

国際貿易における新たなプラットフォームになり得るブロックチェーンの可能性について解説する。

ブロックチェーンを国際貿易の実務に活用

国際貿易では、当事者である輸出者と輸入者に加え、輸出・輸入地それぞれの金融機関のほか、運送業者や保険会社、税関など多くの関係者が取引にかかわる。また、取引には信用状や船荷証券、保険証書など様々な書類が必要である。この国際貿易の実務にブロックチェーンを活用することにより、大幅なコストの削減と所要時間の短縮が期待できる。
複数の企業や組織をまたがったメンバー間で情報共有するコンソーシアム型のブロックチェーンを使用するのだ。一度記録した情報は改ざん・削除できない特徴を活用。書類でやり取りしている情報をブロックチェーン上で共有することで、関係者がいつでも正確な情報にリアルタイムでアクセスでき、また、過去の履歴も即座に参照することが可能となる。
これにより、各社でデータ入力や偽装確認といった作業を行う必要がなくなり、伝達の間違いやタイムラグも解消できる。また、金融機関が個別に行っているKYC(Know Your Customer=顧客確認)の情報もブロックチェーン上で共有することで、各社での確認作業を効率化できる。

国際貿易における新たなプラットフォームに

貿易では物の流れと書類の流れが独立しているため、書類手続きの遅れにより、貨物が届いているにもかかわらず受け取れない事態が発生する。書類手続きを効率化することができれば、取引全体における所要時間を短縮することが可能となる。
通関でも、ブロックチェーン管理者が当該の税関官署に権限を与えることで、ブロックチェーンに記録された情報を参照することができ、手続きの効率化につながることが考えられる。また、ブロックチェーン上に実装したワークフローから条件を満たした時点でプロセスを自動で実行させることで、国際貿易における「スマートコントラクト」も実現可能となる。
これまでも国際貿易で書類を電子化する取り組みはあった。しかし、関係者が個別にデータを連携する方法であったため、規約の統一が難しいことや、個別にシステム開発が必要となりコストが高くなるなどの理由で浸透していない。一方、ブロックチェーンは非中央集権型であり、特定事業者ではなくその仕組みによって信頼性が担保され、拡張性に優れていることから、国際貿易における新たなプラットフォームとなることが期待される。

国際貿易の共通基盤に

国際貿易の共通基盤に

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 本橋 由祐

日経産業新聞 2018年11月19日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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