ブロックチェーンのメリットとデメリット

「ブロックチェーン活用術」第3回 - ブロックチェーンですべての課題が解決されるのか。具体例を挙げて解説する。

ブロックチェーンですべての課題が解決されるのか。具体例を挙げて解説する。

ブロックチェーンのメリット

ブロックチェーンには一度記録された情報を改ざんできないという特徴がある。仮想通貨「ビットコイン」では、この特徴を取引履歴の記録に活用することで、改ざんされない信頼性の高い台帳を実現している。
また、ブロックチェーンは自律分散システムであり、その信頼性を運営事業者に対する信頼ではなく、仕組みで担保することができる。それにより、特定事業者によらない、透明性の高い台帳を複数の事業者や不特定多数と共有することが可能となる。
この台帳を活用し、契約内容をブロックチェーンで管理する「スマートコントラクト」の実現が期待されている。契約の成立に必要な条件を改ざん不可能なブロックチェーン上に記録し、その条件を満たした時に自動執行されるものである。事前に定義した条件に従い厳格に契約が執行されるため、契約で互いの信頼関係や第三者の仲介が不要となり、見知らぬ相手とも直接安全な取引が可能となる。これにより、契約にかかる時間の短縮や、仲介者を介さないことによるコスト削減が実現できる。

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは

ブロックチェーンのデメリット

もっとも、ブロックチェーンですべての課題を解決できるわけではない。できないこともある。
ブロックチェーンはその仕組みから、一度記録された情報を削除したり内容を変更したりすることができない。このため、必要に応じて変更や削除が求められる情報の記録には利用できない。その代表的な例が個人情報である。
個人情報は個人からの要求に応じて削除する必要があるが、ブロックチェーン上に一度記録されてしまうと、この要求に応えることはできない。個人情報に関連する用途でブロックチェーンを利用する場合には、個人情報とひもづけるための情報のみをブロックチェーン上に記録し、個人情報自体は別のデータベースに保管するといった対応が必要となる。
また、ブロックチェーンは1つの組織内で利用することには適さない。単一組織内ではブロックチェーンを構成するすべてのコンピューター(ノード)が集中管理下にあるため、改ざんされないというメリットが保証されない。
ブロックチェーンには、データ量が増え続ける、高速処理が苦手といったデメリットもある。これらの点を考慮すると、単一組織におけるブロックチェーンの用途は限られる。

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 本橋 由祐

日経産業新聞 2018年11月5日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

ブロックチェーン活用術

お問合せ