デジタルレイバーと人との協働、それぞれの得手・不得手を生かした業務プロセス
「同僚はデジタルレイバー」第7回 - デジタルレイバーの得手・不得手を解説し、人間とデジタルレイバーが共生する、これからの雇用について考察する。
デジタルレイバーの得手・不得手を解説し、人間とデジタルレイバーが共生する、これからの雇用について考察する。
2014年に発表された英オックスフォード大学のオズボーン准教授の調査「雇用の未来」によると、47%の雇用がロボットや人工知能(AI)に代替されるという。
ロボットやAIを含むデジタルレイバーが得意な活動領域は、認識・予測推論・実行の3つである。認識は自然言語などの音声や画像などの理解及び検索、異常や不正の検知などであり、予測推論は需要予測・売上予測をはじめとした数値予測や顧客の声などの定性的情報からの知見の提示、及び個人別商品レコメンドや連動広告などである。実行には、作業の自動化や最適化、文章の要約や翻訳などが含まれる。一般的なデジタルレイバーは、これらの活動を単体もしくは組み合わせて活用される。
デジタルレイバーの特徴は「明確に定義された問題を蓄積された膨大なデータを使って実施する」ことである。言い換えると、これに当てはまらない事項では、デジタルレイバーにできないことがいくつか存在する。例えば、複数の事象を総合的に理解し、その本質的な問題をみつけ問題提起することは期待できない。また、ルールが明確でなくデータ量が少ない場合は、状況を類推することができず対応できない。
今後、人間に必要な役割は、このデジタルレイバーにできないことを提供することであるといえる。すなわち「あいまいな問題」を自ら発見して定義し、「今ないもの」を想像・創造し、人間の感情に配慮し実行することである。前述の「雇用の未来」においても、なくならない仕事の判断基準は、「創造性(創造的知性)」「社会性」「器用さ(知覚と操作)」であった。
このように考えると、人間はデジタルレイバーをサポート役として、彼らの能力を存分に活用し共生することで更なる付加価値をつけることができる。現在行われている業務は、デジタルレイバーに向いている活動だけ、もしくは人間がすべき活動だけで構成されていないことも多い。その場合は、業務を見える化して工程毎に分解し、デジタルレイバーと人間が効率よく働ける業務プロセスに見直すことになる。
人間とデジタルレイバーの協働による高度化
デジタルレイバーの得意分野 | 人間にしかできないこと |
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日経産業新聞 2017年4月7日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。