非原産材料の実質的な変更とは
産品の製造に非原産材料を使用していても、締約国における加工の結果として、当該非原産材料に実質的な変更があった場合、その産品を締約国の原産品と認められる場合があります。実質的な変更があったと判断する基準は、「関税分類変更基準(CTC)」、「付加価値基準(VA)」、「加工工程基準(SP)」等があります。
産品の製造に非原産材料を使用していても、締約国における加工の結果として、当該非原産材料に実質的な変更があった場合、その産品を締約国の原産品と認められる場合があります。
なおそれらの基準は適用するFTA又は品目によって異なりますので、適用するFTAとその対象産品のHSコードを以て該当する基準(これを品目別規則=PSR(Product Specific Rule)と言う)を確認する必要があります。例えば下図に示すように、日本から自動車用のハンドルとタイヤをそれぞれタイ、オーストラリア、メキシコに輸出するとした場合に、同じ製品であっても適用するFTAごとに品目別規則が異なり、また製品によって同じFTAであっても異なる規則が定められていることがお分かりいただけると思います。
1.関税分類変更基準(CTC)
物品の製造において、製品とその生産に使用されたすべての非原産材料の間に一定のHSコードの変更がある場合に、その製品の製造を行った国の原産品と判定する基準です。原産性を認める規準として、そのHSコードの変更の程度に応じて基本的には以下の3パターンがあります。
- HSコードの上2桁(「類」)の変更(CC:Change in Chapter)
例:HS.8603.32 ⇒ HS.8703.32 - HSコードの上4桁(「項」)の変更(CTH :Change in Tariff Heading)
例:HS.8702.32 ⇒ HS.8703.32 - HSコードの上6桁(「号」)の変更(CTSH:Change in Tariff Sub Heading)
例:HS.8703.31 ⇒ HS.8703.32
2.付加価値基準(VA)
製品の生産過程において、十分な付加価値(原産材料、労務費、製造経費、利益等の価値)が加えられるような加工が締結国で行われた場合に、その製品を加工が行われた締約国の原産品と判定する基準です。各協定によって付加価値割合の計算方法が定められており、その計算式により算定された付加価値割合が、一定の閾値を超えていれば原産品と判定されます。 例えば、産品の価値の内、全体の40%以上がA国で付加された場合、その製品をA国の原産品とするという考え方です。
原産地資格割合のイメージ図
付加価値割合の一般的な計算方法
・控除方式(Build-Down)(産品の価格から非原産材料の価格を差し引く方法)
・積上げ方式(Build-Up)(原産材料や生産コストの価格を積み上げる方法)
3.加工工程基準(SP)
非原産材料を使用した最終産品が、相手国において、特定の加工・作業が行われた場合に、その産品がその加工が行われた国の原産品と判定する基準です。上記1・2の基準と比べると適用される範囲が狭く、主に化学品、繊維製品に用いられる基準です。
執筆者
KPMG税理士法人
関税・間接税サービス
パートナー 神津 隆幸