BEPS導入下に伴う移転価格文書とポリシーの整備

2016年4月1日(に開始する事業年度)から新たな移転価格文書化に関する規定が導入され、マスターファイル、国別報告書、ならびにローカルファイルの整備が求められた。これにより、各企業は移転価格文書の作成ならびに移転価格ポリシーの整備に関し、従来よりも踏み込んだ対応が必要となる。

2016年4月1日(に開始する事業年度)から新たな移転価格文書化に関する規定が導入され、マスターファイル、国別報告書、並びにローカルファイルの整備が求められた。

2016年4月1日(に開始する事業年度)からBEPS行動計画13の議論を反映した新たな移転価格文書化に関する規定が導入され、マスターファイル、国別報告書、ならびにローカルファイルの整備が求められた。(日本版移転価格文書化(Japanese Transfer Pricing Documentation)を参照)

多くの納税者は、新たな移転価格文書化の規定が導入されたことにより、コンプライアンス対応に係るコストの増加に直面している。また、より重大な課題として今まで税務当局が保有し得なかった情報に税務当局がアクセスすることが可能となるほか、関連する移転価格文書の情報が電子ファイルの形式で税務当局に提出されることになったため、本邦における税務調査の効率化と、そうした情報を活用した税務調査件数の大幅な増加の可能性が懸念されている。一方で、マスターファイル・国別報告書を通じて提出された情報を参照した海外税務当局による調査の増加も想定されるなかで、潜在的な二重課税リスクの増加も強く懸念されている。BEPSの行動14(効果的な紛争解決メカニズムの策定)では、国際的二重課税の解決手段として租税条約における仲裁条項の導入が議論され、導入されれば相互協議の促進、紛争解決に大きく前進するとして本邦納税者の間でも歓迎されている。しかしながら、条約は各国の主権が係る問題でもあり、義務的仲裁条項の導入はBEPSプロジェクトの参加国の間で必ずしもコンセンサスが取れていないという状況について懸念する声も聞かれる。

そのため、親会社主導での移転価格ポリシーの整備と、日本を含めた各国関連者の移転価格への対応状況の確認を必要最低限の防衛策として進めることが必須であると言える。特に、国税庁は2017年6月付で「移転価格ガイドブック」を開示しており、税務当局は、納税者の自発的な税務コンプライアンスの維持・向上のため、税務に関するコーポレートガバナンスの取組について納税者にヒアリングする傾向がある。よって、税務担当者による移転価格文書の整備だけでなく、トップマネジメントを含めたグループ全体での移転価格ポリシーを本社主導で整備していくことが期待される。

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