移転価格課税事案に関する不服申立て(再調査の請求・審査請求)

移転価格課税が行われた場合におけるその課税の解決手段としては、租税条約に基づく相互協議の申立てと、国内法に基づく行政上の救済制度である不服申立て(およびそれに続く司法上の救済制度である訴訟)が挙げられる。

移転価格課税が行われた場合におけるその課税の解決手段としては、租税条約に基づく相互協議の申立てと国内法に基づく救済手続である不服申立て(およびそれに続く訴訟)が挙げられる。

租税条約において、相互協議の申立ては、国内法上の救済手続に関係なくこれを行うことができるとされており、課税を受けた企業としては、相互協議の申立てと不服申立てを同時に行うことができる。両手続を同時に行った場合、企業としていずれを優先するかについての希望等を不服申立て先である処分庁・不服審判所に対して上申することが可能であり、実務上は、二重課税排除の可能性が高い相互協議による解決を先行するケースが多い。相互協議による解決を先行する理由としては、課税が全部取消しとならなくとも、相手国においてその課税相当を対象とする対応的調整が行われることにより、少なくとも企業グループ内の二重課税が排除できるからである。相互協議による解決を先行し、万が一、相互協議が合意に至らなかった場合(相互協議の仮合意内容に企業が同意しない場合)には、あらためて不服申立ての審理の開始を処分庁・不服審判所に対して依頼し、不服申立てによる解決を図ることとなる。

相互協議の申立てによる解決を図らないケースとしては、企業の取引相手である国外関連法人所在地国との間で租税条約が締結されていないケースが挙げられる。このようなケースでは、不服申立てによる解決を図らざるをえず、そのため、特にそのような国外関連法人との取引については事前の移転価格対応を注意深く行う必要性が相対的に高いといえる。また、移転価格課税時の移転価格算定方法等に関して、企業が考える移転価格ポリシーとの間に乖離があり、相互協議を通じても企業が求める結果が得られないと見込まれる場合にも、相互協議ではなく不服申立てによる等の国内救済手続を通じて、解決を図ることとなる。

課税を受けた企業は、国税に関する法律に基づき処分庁が行った更正・決定などの課税処分等に不服があるとき、不服申立てのうち、国税不服審判所長に対する審査請求と、処分を行った処分庁に対する再調査の請求のいずれかを選択して行うことができる。再調査の請求を選択した場合であっても、再調査の請求についての決定後の処分になお不服があるときには、国税不服審判所長に審査請求をすることができる。

審査請求によっても解決がなされない場合に、企業は訴訟を提起することができ、あるべき移転価格算定方法等につき司法の判断に委ねるという選択肢を採ることがある。なお、国税についての処分の取消を求める訴訟の提起は、原則として審査請求の裁決を経た後でなければできない(審査請求前置主義)。

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