日本版移転価格文書化(Japanese Transfer Pricing Documentation)

2010年度税制改正により、推定規定/質問検査規定(シークレットコンパラブル)が改正され、企業が作成または保存すべき書類の範囲が明確化された。その範囲は、多くのOECD加盟国における移転価格文書化規定の要件と同様であることから、2010年度税制改正で“日本版移転価格文書化”規定が設けられたといえる。

2010年度税制改正により、推定規定/質問検査規定(シークレットコンパラブル)が改正され、企業が作成又は保存すべき書類の範囲が明確化された。その範囲は、多くのOECD加盟国 ...

2011年度税制改正において国税通則法が改正され、移転価格調査の方法について変更が生じている。法人税調査については、原則として一般法人税の調査と移転価格調査が「一の調査」として行われるが、納税義務者の負担軽減の観点から、納税義務者の事前の同意(「区分同意書」の提出)がある場合には、一般法人税の調査と移転価格調査を区分して行うことができることとなった。この改正により、法人税調査の中で移転価格調査も受けるケースと「区分同意書」を提出し別途移転価格調査を受けるケースが生じることとなるが、いずれのケースにおいても移転価格調査がより広く行われることが予想されるため、移転価格文書の具備など納税義務者の事前の準備がより重要となると考えられる。

2016年度にはOECDによるBEPS行動計画13の最終報告書を踏まえて税制改正が行われ、OECDガイドラインの第5章「移転価格文書化」を改訂内容と同様に3段構えの移転価格文書化が導入された。日本における新移転価格文書化規定の概要は以下の通りである。

  日本版マスターファイル
  (事業概況報告書)
日本版CbCレポート
   
(国別報告書)

適用開始

2016年4月1日以後に開始する事業年度

2016年4月1日以後に開始する事業年度

提供義務者

多国籍企業グループの構成会社等である内国法人又は国内にPEを有する外国法人

複数ある場合には、一定の届出により、代表する法人のみが提供することも可能

  1. 条約方式(原則):特定多国籍企業グループの内国法人である最終親会社等又は代理親会社等
  2. 子会社方式(補完):外国法人が最終親会社である特定多国籍企業グループの構成会社である内国法人、又は国内にPEを有する外国法人

提出義務の免除

前年のグループ連結売上高が1,000億円未満

前年のグループ連結売上高が1,000億円未満

記載内容

特定多国籍企業グループの組織構造、事業等の概況、無形資産、グループ内金融活動、連結財務諸表等

  1. 特定多国籍企業グループの構成会社等の国別の収入金額、税引前当期利益額、納付/発生税額等
  2. 国別の構成会社等の名称、主要な事業内容等
  3. 上記項目についての参考事項

提供期限

最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内

最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内

提出方法

電子データ(e-Tax)

電子データ(e-Tax)

使用言語

日本語又は英語

英語

ペナルティ

30万円以下の罰金

30万円以下の罰金

  日本版ローカルファイル(同時文書化)

適用時期

2017年4月1日以後開始する事業年度

作成義務者

国外関連取引を行った法人

同時文書化義務の免除

1社の国外関連者との間の取引について、1.前事業年度の取引金額(受払合計)が50億円未満で、かつ、2.無形資産取引金額(受払合計)が3億円未満である場合

作成書類

独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類

  1. 「国外関連取引の内容を記載した書類」
  2. 「国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」

提出期限

<同時文書化取引>

(1) 独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル):
     45日以内の調査官の指定する日まで

(2) 独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類(ローカルファイルに記載された内容の基礎となる事項を記載した書類、ローカルファイルに記載された内容に関連する事項を記載した書類、その他独立企業間価格を算定する場合に重要と認められる書類):
     60日以内の調査官の指定する日まで

<同時文書化免除取引>

(1)・(2):60日以内の調査官の指定する日まで

作成期限

法人税確定申告書の提出期限

使用言語

指定なし

保存期間等

原則として、確定申告書の提出期限の翌日から7年間、国外関連取引を行った法人の国内事務所で保存

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