費用分担契約(コスト・シェアリング契約:Cost Sharing Arrangement)
費用分担契約とは、契約当事者が各自の行う事業において生ずる収益の増加・費用の減少などの便益を得ることを目的として、無形資産または有形資産の開発・生産・取得および役務の開発・提供・受領を共同で行うことを約し、当該共同活動への貢献(含、リスク引受および費用負担)を分担して行うことを定める契約である。
費用分担契約とは、特定の無形資産を開発する等の共通の目的を有する契約当事者間で、開発活動等に伴うリスクとその活動から生み出されるリターンをシェアすることを定める契約のことをいう。
移転価格税制上の観点から適切な費用分担が行われているか否かについては、次のような事項について十分な検討と文書化を行うことが必要となる。なお、論点の複雑性、不確定要素の多さなどから、移転価格課税リスクの程度に応じて事前確認制度を活用しているケースもみられる。
- 共同活動の範囲、共同活動への貢献、その他の費用分担契約内容と事実の一致
- 各参加者が、共同活動を通じて開発・維持された無形資産などから生じる収益・便益を享受することが合理的に見込まれるか(予測便益を有しているか)
- 予測便益割合の計算の妥当性
- 貢献価値割合の計算の妥当性
- 貢献価値割合が予測便益割合と一致しているか
- 費用分担契約への参加者の新規加入若しくは脱退又は契約終了時における無形資産の各当該持分に係る適正対価の授受
OECDは2015年4月29日、税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)に対する行動計画8(無形資産に係る移転価格)に関するディスカッションドラフトを公表し、2015年10月には行動計画8から10までに関して1つにまとめたBEPS最終報告書が公表された。当該最終報告書ではCCAの参加者の要件などの費用分担契約に関するOECD移転価格ガイドライン第8章の改訂が示され、2017年7月に公表されたOECD移転価格ガイドラインにその内容が反映された。主な改定内容としては、単に費用を負担しているというだけでリスクを引き受ける能力や権限を持たない事業体が、研究開発の成果物である無形資産の持分を取得し便益を享受することは適切ではないとする考え方に基づき、参加者の貢献を費用だけではなく価値(すなわち独立企業間価格)で測定する方法が提言され、それに係る事例が示された。
その後、OECD移転価格ガイドラインの第8章の改訂の追加に伴い、2022年6月には本邦において、費用分担契約に関する移転価格税制上の取扱いを明確化するなどの事務運営指針の改正が行われた。