•     経済協力開発機構(OECD)は2023年11月14日付けで2022年12月31日現在の相互協議(Mutual Agreement Procedure, MAP)事案に関する統計データを公表した[1]。MAPとは、各国(管轄地域)の税務管轄当局間で租税条約の相互協議条項に従い、個別事案に対する交渉・協議を行うことで、納税者の二重課税、条約政策の執行、租税待遇の差別化などの問題を共同で解決する協議をいう。これは、税源浸食と利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組み(Inclusive Framework on BEPS)において、OECDがBEPS行動計画14に従って公表したMAP統計データであり、世界133の租税管轄地域及びほとんど全てのMAP事案をカバーしている。

•    さらに、OECDは初めてBEPS包摂的枠組みの各租税管轄地域のMAPに関する包括的なガイドラインを公表した。当該ガイドラインは、租税条約の参考資料、管轄当局の連絡先に関する情報及び各租税管轄地域における最新のMAP統計データを含む各租税管轄地域のMAP政策と実務を要約している。

•    本稿は、OECDが公表した133の税務管轄地域のMAP統計データ、中国本土のMAP統計データの要点分析、KPMGのインサイトを通して、多国籍企業(「海外進出」企業及び「外資誘致」企業を含む)がMAPという紛争解決メカニズムをよりよく理解し、柔軟にMAPを活用することにより移転価格税制などに係る租税リスク管理を行うようサポートする。